「必要な支援積極的に行う」 ニッスイのギンザケ海面養殖計画 佐々木市長が考え示す 

▲ ギンザケの試験養殖が計画される広田漁港沖

 水産大手の㈱ニッスイ(東京都)が陸前高田市の広田湾で計画しているギンザケの海面養殖について、佐々木拓市長は4日の市議会定例会で、「地域経済にとって非常に重要な事業で、将来的にも有望。市として必要な支援を積極的に行う」と考えを述べた。同社は広田湾漁協との共同で11月にも試験養殖を開始し、来年6、7月ごろ水揚げを行う見通し。秋サケの不漁が深刻化する中、将来的には年間数千㌧の生産を目指しており、事業の進展に注目が集まる。(高橋 信、2面に一般質問の主なやり取り

 

来月からの試験実施見込む

 

 ギンザケの海面養殖は同日の市議会定例会一般質問で、伊勢純議員(日本共産党)が取り上げた。これまでの経過や他産地の状況を尋ねたうえ、「海域環境や養殖生産物への影響をどのように考えているか」と答弁を求めた。
 市によると、試験養殖場は広田漁港沖などの旧定置網漁場で、直径25㍍の円形海面いけす2基を設置する。稚魚を海面で育て、来年6、7月ごろの水揚げを予定。生産量は200㌧を見込んでいる。
 試験養殖を1、2年間程度実施し、周辺の海況や他の漁業活動への影響を確認したうえで、正式な事業に移行する構想。同社が立ち上げた子会社が漁協組合員となって操業する。
 同事業を巡っては、佐々木市長が今年4月、ニッスイ関係者と面談した際、会社側から市内でギンザケの海面養殖ができないか提案を受け、計画が動き出した。空いていた漁場の有効活用にもつながることなどから、同社と漁協との交渉も順調に進み、8月末、試験養殖実施が決まった。
 すしネタとしても人気のギンザケ。市によると、国内では115カ所で養殖が行われており、県内でも不漁の秋サケを補完しようと、久慈市、宮古市、山田町、大槌町、釜石市で海面での養殖が展開されている。
 全県における海面養殖の令和4年度生産量は1191㌧。県内で先駆けて本格事業化に乗り出した久慈市の同年度水揚げ金額は約3億4000万円で、ニッスイが事業展開している大槌町の同年度水揚げ金額は約3億円だった。
 陸前高田市では昭和50年代、広田湾でギンザケ養殖が行われたが、当時はすしネタとしての需要がほとんどなく、価格の低迷などを受け、すべての経営体が廃業。イワシなどを餌としていたことから、海洋環境が悪化した経緯がある。
 その後、餌の改良や効率的に餌を与える自動給餌システムの導入が進み、海洋環境への影響を大幅に減らした先進的な養殖が国内外で浸透。県内でも水質や海洋環境が悪化している例は報告されていないという。
 佐々木市長は「県内の他地区でも、サーモンの海面養殖は地域の振興に大きく貢献していると聞いている。水産分野における国のトップ企業が漁協の組合員として新たに事業を行うことは、漁協の経営改善に加え、地域の関連産業も含め、非常にメリットのあることだ」と強調した。