絶景の長崎に新空間 佐々木さん運営の喫茶店「CAFE gull」 恵まれた海を生かす〝目的地〟に意欲
令和5年10月6日付 7面

大船渡市赤崎町の長崎地区に、コンテナを生かした喫茶店「CAFE gull(カフェ ガル)」が先月オープンし、好評を博している。店主の佐々木ひろみさん(56)=大船渡町出身=は、大船渡の海を生かした空間を追い求めて準備を重ね、大船渡ビジネスアカデミーでも研さんを積んだ。市内外から訪れる一人一人の接客を大切にしながら、恵まれた自然環境を生かした〝目的地〟としての充実に意欲を見せる。
赤崎地区側から車を走らせ、長崎漁港が見える前のカーブに、武骨なコンテナの建物が視界に入る。山林だった土地を借り、造成工事を施し、貨物輸送などで使われたコンテナ3本を並べ、店舗に改修した。
内部に入ると印象は一変し、窓越しに広がる雄大な海と空が歓迎するとともに、窓沿いのカウンターからじっくりと眺望を堪能できる。佐々木さんが仕込みや調理を担当し、飲料のほか、ランチは2種類を提供。「入った瞬間に『すごい』と声を上げてくれたり、食事後に『おいしい』と言って下さるのがうれしい。地元の方でさえ『大船渡にこんなところがあったのか』と驚いたりされる」と話す。
佐々木さんは市内の小中高校から短大進学や金融機関勤務を経て、長年、花に関わる仕事に就いていた。フラワーアレンジメントを宮城県の自宅などで指導する際には、受講者に菓子や飲み物を振る舞うことも。NPO法人が運営するカフェにも携わった。
10年ほど前から、カフェ運営の思いはあった。「絶対にやると決めたきっかけが、昨年1月ぐらいに、30歳で亡くなっている父の妹が、喫茶店をやりたかったという話を母から聞いた。私が、その夢をかなえたいと思った。もともとあった『やりたい』が『やる』に変わった」と振り返る。
大船渡で海を堪能できる場所を探し、土地の見込みがついたのが昨年6月。合わせて、資金確保などに生かすことができないかと、大船渡商工会議所による市内の中小企業経営者や後継者らを対象とした第5期の大船渡ビジネスアカデミーに参加した。
今後はカフェに加え、空間を生かした店舗運営にも意欲的。店内にはDJブースがあるほか、ガーデンエリアも設けており、海を眺めながらのガーデンウエディング開催も見据える。店名に付けた「ガル」は英語でカモメ。海鳥が見下ろすような景色を生かし、幅広い活用を見据える。
市街地からは離れ、営業的には厳しい部分もあるが、幅広い人々が足を運ぶ目的地としての定着に意欲を見せる。「今は三陸道が開通して、遠くからでもわざわざ足を運んでくれる。自然を目の当たりに感じてほしい。ここを訪ねながら、さまざまなスポットを巡るきっかけにもなれば。もっと大船渡のいいところを知ってほしい」と力を込める。
座席はスタッフ数によって変動するが、常設のカウンターは8席で、テーブル席もある。営業時間は午前11時~午後5時(水曜日はラストオーダー同2時)。木曜日定休。問い合わせは同店(℡22・9987)へ。