活用進む〝人材交流拠点〟 仕事と学び複合施設イコウェルすみた 用途や年代、職種幅広く

▲ 施設ではワークショップなども行われている(8月)

活用が進むイコウェルすみた

 住田町が世田米の応急仮設住宅本町団地跡地に整備し、今年5月30日にオープンした「仕事と学び複合施設」(愛称・イコウェルすみた)。サテライトオフィス、オンラインを活用したイベントや各種講座等が開催できるコワーキングスペースなどを配置し、町が住田ならではの〝人材交流拠点〟と位置づける施設だ。今月3日には、町内外からの利用者が1000人を突破するなど活用が進む。さらなる利用促進による関係・交流人口増加、それに伴う新たな事業創出など、波及効果への期待が高まる。(清水辰彦)

 

 東日本大震災の発生を受けて建設された本町団地の仮設住宅には最大で17世帯が入居し、令和2年4月までに全員が退去。これに伴い、町は同11月に同団地の跡地利活用方針を策定し、震災の記憶や記録を継承し、新たな働き方の受け皿となる施設の整備事業に取り組んできた。
 同団地の仮設住宅は令和4年夏に解体が完了。跡地には管理棟、共用棟、展示棟が各1棟、オフィス棟、滞在体験棟が各2棟整備され、解体した仮設住宅の部材も一部に活用した。
 総事業費は約1億円。町は、今年3月に亡くなった音楽家・坂本龍一さんが代表を務めていた一般社団法人モア・トゥリーズ(東京都)が、震災後に仮設住宅の建設支援として贈った寄付金を震災復興基金として積み立てており、これに企業版ふるさと納税による寄付金を加えて財源とした。
 共用棟はワーキングスペースとして整備され、パソコンを使用しての仕事が可能。オフィス棟は町外在住者が仕事場として一時利用しているほか、町民も会議や勉強、仕事で活用する。
 滞在体験棟は、住田を知ってもらうための〝お試し滞在〟に向けて整備。展示棟は、住田型仮設住宅を再現し、内部に震災時の後方支援などといった記録を展示し、後世に伝えている。
 共用棟は中学生、高校生の自学自習、一般のリモートワークなどで活用されている。このほか、各種セミナーや研修会、住田町と連携協力に関する包括協定を結ぶ津田塾大生(東京都)による町民とのワークショップ、愛知県設楽町教委による人材育成研修事業などでの利用があり、県内外から注目を集めている。
 オープン後、6月は約140人、7月は約370人、8月は約230人、9月は約300人が利用。今月3日には1000人を突破し、5日現在での利用者は1065人となっている。
 施設は、町が地域プロジェクトマネージャーとして採用した関博充さん(50)=茨城県出身=が管理。関さんによると、共用棟は主に町民が使用しており、年代は幅広いという。
 町民への周知が進む一方、今後は町外・県外へのPRも図り、利用者らと町内事業者が連携することによる新たな事業の創出など、町内外の人材が集う交流拠点としての機能発揮を目指す。
 町企画財政課の佐々木淳一課長は「さらに多くの人が集うような仕掛けづくりをしていきたい」と展望を語る。