災害時も業務継続を 町や医療等の関係機関 連携型・地域BCP策定目指す

▲ 9月にシミュレート訓練が行われ、災害時の対応を確認

 住田町は本年度、厚生労働省委託事業「在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業」のモデル地域に選定され、連携型BCP(事業継続計画)・地域BCP策定に取り組んでいる。町や医療、介護、福祉などの関係者が、自然災害発生時にも継続して在宅療養患者へ介護サービスを提供できるよう、シミュレーション訓練や会合を重ねており、年度内には連携した取り組みの方向性をまとめる。(清水辰彦)

 近年多発する自然災害や新型コロナウイルス感染症などによって、施設に被害が生じた、あるいは従事者が感染したといった場合でも、在宅療養者には継続してサービスを提供する必要がある。
 病院など一定程度の規模を持つ医療機関ではBCP策定などを通じて災害時の医療提供体制が強化されつつあるが、在宅医療に関しては患者が医療施設外にいることもあり、災害時には在宅生活継続のために行政や医療・介護提供機関と連携した対応が不可欠だ。
 そのため、同業、類似事業者間の連携による「連携型BCP」の策定と、さらには地域全体の医療・ケアの継続と災害時の早期復旧を目的とする「地域BCP」へのスケールアップが重要となる。
 同事業では、先進的に連携型BCP・地域BCP策定に取り組む地域をモデルとし、今後、全国展開するにあたってのプロセスにおいての手だてを創出しようと行っている。
 本年度、モデル地域に選定されたのは住田町を含む全国26の市町村。
 同町は医療機関が少なく、さらに高齢化率の高まりによって災害時には地域住民同士での支援が難しくなってきている。中山間地域であることから災害で道路が遮断されれば孤立する地域も発生し、医薬品などが不足する恐れがある。
 災害発生時、町は地域防災計画やBCPに基づいて対応することとしているが、在宅医療、在宅介護サービス、施設サービスの継続が困難となった際、どのように対処するかについては検討してこなかった。各施設でも、それぞれでBCPを策定または策定中だが、連携することによって限られた医療資源の中で住民の命を守ろうと、本年度から連携型・地域型BCPの策定に取り組み始めた。
 町では7月、住み慣れた地域で暮らし続けられる環境を構築するため、「住田町の在宅医療等のあり方検討会」を設置し、在宅医療だけでなく、今後の高齢化社会を見据えた保健・医療・福祉・介護事業等のあり方について検討している。
 連携型・地域型BCPの策定にあたっては、同検討会参画機関である県立大船渡病院、町社会福祉協議会、介護事業所などの実務者で構成するタスクフォースを8月に設置。9月までに2回の会合を設け、シミュレーション訓練も行った。
 訓練は9月に実施。メンバーがグループに分かれて水害時の対応について協議。断続的に大雨が降り続いている想定で、大雨注意報、大雨警報、洪水警報、氾濫発生と、警戒レベル1~5の段階ごとに町内の状況を仮定し、避難所の開設、道路の寸断や停電、電話の不通など、さまざまな状況においてどのような対応を取るのか、所属機関を超えて意見を出し合い、情報共有の課題などを抽出した。
 今後は、課題を整理したうえで連携のあり方を検討し、年明け1月~2月ごろには、平時から対応できる取り組みを定める見込み。