AI&オートコールの新システム 11月5日 本格運用開始 災害時の安否把握容易に 市が全国初の導入 登録者に避難情報電話発信

 陸前高田市は「世界津波の日」の11月5日(日)、災害に関する避難情報を自動音声で一斉に電話発信する「オートコール」と、市民の安否状況を把握するAI(人工知能)機能を組み合わせた事前登録制情報伝達システムの本格運用を開始する。災害警戒区域に住む高齢者らへの防災・減災対策として導入を検討してきた。運用されれば防災分野では全国初めての仕組みとなる。11日で東日本大震災発生から12年7カ月。市民が確実に避難したかどうか容易に確認でき、先駆的取り組みとして注目を集めそうだ。(高橋 信)

 

きょう震災12年7カ月

 

 市は11月5日、市内全域の津波避難訓練を実施する予定。これに合わせ、オートコールとAIを組み合わせた新たな伝達システムの市民向け訓練も実施し、運用の流れを確かめる。
 利用するには事前登録が必要。警戒レベル3の「高齢者等避難」を発令する段階からの運用を見込んでいる。
 利用は無料。対象は現段階で、▽災害警戒区域に居住する65歳以上の高齢者や障害者のうち、自ら避難することが困難で、支援が必要な「避難行動要支援者」▽津波災害を除く災害時に孤立化が想定される地域の住民──などを想定しており、今後周知し、登録申し込みを受け付ける。
 応答は携帯電話、固定電話どちらでも可。避難情報を自動音声で聞くことができ、「避難指示が出ています。避難できますか」「現在地、けががないかなど、あなたの今の状況を教えてください」などの問いに肉声で答える。
 返答した内容はAIが判読、テキスト化し、市防災課に集積される流れ。「けがをした」「痛い」など、市が設定した危険ワードが返答の中に含まれている場合、テキストを赤字表記する仕組みとなっており、利用者の緊急度や状況の迅速な把握につなげる。
 市は防災行政無線に加え、戸別受信機を配布したり、ラインやフェイスブックなどSNSを駆使し、災害情報を周知している。しかし、無線が聞こえにくい場所があるほか、高齢者の中にはSNSに不慣れな人もみられ、現在の伝達手段を補完する新たな対策が求められていた。
 無線などの伝達方法は、市側からの「一方通行」だが、新システムは住民からも情報を得る「双方向」となっているのが大きな特徴。システムの構築業務はNTT東日本岩手支店に委託。昨年3月に実施した矢作町下矢作地区での土砂災害避難訓練や、同年10月の県総合防災訓練で実証実験を行った。
 今年8月には、市職員向けに試験運用を開始。災害対策本部の市幹部職員や、市内11カ所に設けられる地区本部に配置される担当職員ら約60人が利用している。これまでの災害時は、防災課から担当職員に避難所へ向かうようメールで連絡し、参集状況をその都度電話などで確認していたため、手間がかかっていた。新システムを活用することで、職員の配置状況を容易に把握できる。
 市防災課の村上聡課長補佐は「災害時、確実に避難行動を取るべき市民に情報を伝え、安否状況を把握できる仕組みで、1分1秒を争う状況下における業務の効率化も期待される。住民と市の双方にとって安全・安心につながるシステムとして運用しながら改善していきたい」と見据える。
 システムの運用イメージは別掲。