秋サケ厳しい出足に 今月10日時点の県内漁獲速報 全県で前年同期の8・2%どまり
令和5年10月20日付 1面

県農林水産部水産振興課は、10月10日時点の秋サケ漁獲速報を発表した。県全体の沿岸・河川累計捕獲数は約1006匹で、前年同期の8・2%にとどまる。大船渡市魚市場の水揚げ数もわずか11匹で、前年同期の192匹を大きく下回る。岩手近海の海面水温が平年に比べ高く、回帰が遅れているとみられる。今月中旬は水温低下が見られる中、関係者は「少しでも増えてくれれば」と期待を込める。(佐藤 壮)
大船渡は5・7%
県沿岸の今季における累計漁獲数は445匹(重量1・07㌧)。前年同期の7486匹(同19・20㌧)に対して5・9%と落ち込んだ。河川捕獲は561匹で、前年同期の12・4%と伸び悩んでいる。
沿岸漁獲の重量は、過去5年平均(159・5㌧)の0・7%にとどまる。金額も96万円と伸びず、同平均(1億2210万円)の0・8%となっている。
魚市場別の漁獲数は山田が前年同期の16・7%で、八木、久慈、野田、普代、田野畑、田老、宮古、船越、大槌、釜石、大船渡はいずれも10%未満に。大船渡市魚市場への水揚げ数はわずか11匹で、前年同期より181匹少ない。1㌔当たりの平均単価は1362円で、前年同期を118円(9・5%)上回った。気仙における河川捕獲はなかった。
同課では「海水温が高く推移し、南下が遅れている状況。最近になって表面水温が下がってきているので、今後の動向を注視したい」と語る。
大船渡市の盛川漁協でも、例年よりも採卵に向けた捕獲が遅れている。関係者は「海水温が下がり、北海道では11月からは伸びてくるだろうと言われているが、こちらではどうなるか。出遅れ分をカバーできるかは、予想が難しい」と話す。
4年度最終版の秋サケ漁獲速報によると、県全体の沿岸・河川累計捕獲数は16万9280匹。過去最低だった3年を21・4%上回った。
県沿岸の累計漁獲量は11万3720匹(重量299・18㌧)。3年度は9万1941匹で、23・7%増加。河川捕獲は4万9392匹で、前年度より24・2%増えた。
しかし、沿岸漁獲の重量は過去5年平均(3700㌧)の8・1%に低迷。金額も3億4927万円と伸びず、同平均(30億3403万円)の11・5%にとどまった。近年は厳しい実績が続くが、本年度は序盤ながらさらに大きく落ち込み、関係者は危機感を強める。
県水産技術センターが発表した本年度の秋サケ回帰予報では、回帰数量は、東日本大震災前の5カ年平均(平成18~22年度)比でわずか1%で、これまでの最低水準が継続すると予測。回帰時期の見込みは、12月上旬が中心としている。
本年度の回帰数量は10万匹、298㌧と推定。最低水準に終わった3年度実績の14万匹、413㌧を下回る。4年度に比べて3、5歳魚が増加する一方、中心となる4歳魚が減少し、震災前の平均値との比較では極めて少なくなる見通し。