基金運用に「SDGs債」 市が本年度から投資本格化 収入確保と社会貢献の両立見据え

▲ 本年度からSDGs債への積極的な投資を進めている大船渡市

 大船渡市は本年度から、基金運用で「SDGs債」への投資を積極的に進めている。すでに3銘柄、2・8億円分を購入し、さらに増やす方針。近年、国連が提唱する持続可能な開発目標の達成を目的に、県や公的団体からの発行が増えている中、市は厳しい財源下での収入確保に加え、社会貢献推進との両立も見据える。(佐藤 壮)

 

 SDGs債は、国連で採択された持続可能な開発目標に基づき、環境・社会課題の解決を目指して資金調達企業や自治体などが発行。近年、急速に発行額が伸び、自治体でも購入が広がっている。
 令和2~6年度を期間とする市の「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」でも、SDGsを踏まえた取り組みの推進を強調。市は債券による基金運用収入の増加に加え、同戦略の考え方にも合致していることから、本年度から投資を進めてきた。
 すでに購入した銘柄は、岩手県が発行する「グリーン/ブルーボンド」と、宮城県発行の「サステナビリティボンド」、独立行政法人日本学生支援機構による大学生らを対象とした貸与奨学金財源となる「ソーシャルボンド」。別の1銘柄も購入手続きを進めており、本年度で4銘柄計3億8000万円分となる見通しで、いずれもSDGs債にあたる。
 岩手県が今年7月に発行した「グリーン/ブルーボンド」は、環境に配慮した事業に加え、震災で被災した三陸における海洋や沿岸の保全強化などに活用。自治体初のブルーボンド発行としても、注目を浴びた。宮城県のサステナビリティボンドは、河川環境や持続可能な漁業、各種社会課題につながるプロジェクトの資金となる。
 家計に例えると、貯金にあたる市の4年度基金残高は前年度から9・1億円減少し、約94・4億円。4年度は市制施行70周年記念事業や新たな森林経営管理事業などで各種基金を活用したほか、東日本大震災の復興事業に充当する基金が事業が進んだことで減少した。直近5年間では減少傾向にある半面、震災前よりは多い金額で推移している。
 市の基金は、財政調整基金や減債基金、魚市場基金、介護給付費準備基金、庁舎整備基金など十数種類ある。ほとんどが現金で、これまで大半は、定期預金で管理してきた。運用目的での債券購入は行ってこなかったが、基金によっては現金を有価証券にできる条文もあった。
 市は本年度、新たに債券運用指針を策定。運用は、国債か、県などが発行する地方債、国が全額出資して設立された独立行政法人等による政府関係機関債とし、さらに社会貢献性などが認められる債券を中心に、銘柄を分散して保有するよう定めた。また、将来における基金の取り崩しや、基金残高の状況を踏まえ、債券運用の可能限度額も盛り込んでいる。
 今後も、SDGs債の運用を通じて、自主財源の確保に加え、環境改善や社会的課題の解決などを目的とした活動を推進する方針。市の橋本邦彦会計管理者は「今後もさまざまな種類の債券を購入することで、より安定的に運用する体制を整えるとともに、歳入確保と社会貢献のバランスもとっていきたい」と話している。