大船渡観光推進協が発足 「地域戦略」の候補DMO登録受け新組織 官民・産業・地域間の連携促進へ

▲ 今後の連携・調整の方向性を確認した大船渡観光推進協議会

 大船渡市の一般社団法人大船渡地域戦略(志田繕隆理事長)が、観光庁から観光地域づくり候補法人(候補DMO)に登録されたことを受け、官民や産業、地域間の連携や合意形成を図る意思決定機関「大船渡観光推進協議会」が27日、設立された。市や商工会議所、各種関係団体で構成し、会長には渕上清市長が就任。正式登録の実現に加え、来訪者の消費額増加など市内観光の産業化に向けた取り組みの充実を誓い合った。(佐藤 壮)

 

 同協議会は地域戦略に加え、市や大船渡商工会議所、市観光物産協会、県旅館ホテル生活衛生同業組合大船渡支部、県飲食業生活衛生同業組合大船渡支部、大船渡観光バス事業協同組合、㈱キャッセン大船渡で構成。初回の会合は大船渡商議所で開かれ、構成団体の関係者や担当職員ら約20人が出席した。
 冒頭、商議所の米谷春夫会頭は「会頭就任以来、実現を願っていた一つがDMO。関係者の理解、協力を得ながら、コンセプトを明確にして、科学的なアプローチをしていかないといけない」とあいさつ。
 引き続き、名称や協議会の規約などを協議し、原案通り決定。会長には渕上市長が就き、副会長は米谷会頭と市観光物産協会の齋藤俊明会長、事務局長は志田理事長がそれぞれ務める。
 志田理事長は、地域戦略のこれまでの取り組みや、今後の戦略を説明。主なターゲットとして▽都市部からのビジネス出張を含む「ひとり旅行者」▽40代以上の首都圏に住む旅好きグループ▽台湾、東南アジアからのインバウンド客──を挙げた。
 「ひとり旅行者」に関しては、観光客に占める宿泊者の割合が多く、さらにビジネス目的での利用が多い現状に言及。志田理事長は「市内では年間20万人の宿泊者があり、三陸沿岸ではトップクラス。中心市街地に宿泊施設と飲食店があり、三陸では競合しない魅力の一つ」と語り、観光消費額の拡大を主眼の一つとする方向性にも触れた。
 議事では、登録DMOに向けた懸念事項も確認。候補DMO審査を通じて、行政や宿泊、交通、観光関係者による「会議体」の設置を求められたが、この協議会が役割を担う。旅行消費額や延べ宿泊者数、来訪者満足度といった業績管理指標の「KPI」も必須となっており、各機関からのデータ提供・共有も進めることにしている。
 また、観光情報などを把握できる地域サイトについては「一元的な情報発信」が要件となっており、既存サイトの統合や相互リンクを付けるといった措置が必要。市内では、市や観光物産協会などがそれぞれホームページを開設し、観光関連の魅力を紹介していることから、関係機関相互で調整・対応が求められる。
 自主財源に関しては、出席者間で意見交換。地域戦略では、経済循環に向けたポイントサービス事業地域循環型ポイントアプリ「大船渡さんぽ」を開発し、消費動向データを活用した販促イベントやキャンペーンを実施している。この手数料収入が運営財源の一つとなるが、安定化までにはさらなるアプリ会員の拡大が必要で、今後数年が見込まれることから、新たな収入確保にも力を入れる。
 出席者からはアプリについて「どこに住んでいる人が、どのくらいの頻度で来店しているかが分かる」として、これらデータ活用の重要性を強調する声も。漁業者らを取り込んだ観光の充実を見据える意見も寄せられた。
 渕上会長は「データをしっかりとり、戦略を担うところに大きな役割がある。資源や人を生かして来訪者を呼び、観光を産業化していきたい」と期待を語り、協力を求めた。
 大船渡地域戦略は、令和3年9月に設立。大船渡さんぽに加え、「恋する旅行。大船渡」と題したモニターツアーなどを展開し、市内事業所を中心とした正会員14社、賛助会員20社で組織している。
 DMO(観光地域づくり法人)は地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに、地域経営の視点に立った観光地域づくりの司令塔としての役割が期待され、全国的に設立の動きが広がる。
 大船渡地域戦略は先月、観光庁から候補DMOとして登録された。気仙の団体が地域DMOに候補登録されるのは初で、今後の展開が注目される。