へい死で苦戦 計画の77%に 広田湾産イシカゲ貝 本年度出荷数量58・6㌧

▲ 今シーズンの水揚げが終了した広田湾産イシカゲ貝

 陸前高田市の広田湾漁協(砂田光保組合長)は、特産の広田湾産イシカゲ貝の本年度出荷実績をまとめた。数量は前年比25・4㌧減の58・6㌧で、計画の77%にとどまった。貝のへい死の大量発生が原因で、過去最多の水揚げ実績となった昨年度から減産した。(高橋 信)


 同漁協によると、支所別の数量は気仙が前年比7・8㌧減の25・4㌧、米崎・小友が同13・7㌧減の21・1㌧、広田が同3・9㌧減の12・1㌧で、いずれも減産となった。
 本年度は、昨年度よりも約3週間早めの7月上旬に出荷を開始。10月末までの出荷を見込み、水揚げ量は76㌧を目標に掲げていたが、想定外のへい死が待ったをかけた。メインの東京・豊洲市場をはじめ、各市場から堅調に需要があったため、殻長5・5㌢の出荷サイズが品薄となり、約1カ月早めの9月末に今季の水揚げを終えた。
 ベテラン生産者は「ここまで死貝が多かったのは過去に経験がない」とつぶやく。
 高水温の影響を受けやすいとされるイシカゲ貝。今夏は記録的な酷暑が続き、この生産者は「直接的な原因は不明だが、海水温の上昇が大量死につながった可能性は考えられる」と指摘した。
 また東京電力福島第一原発の処理水海洋放出に伴う需要減も懸念されたが、その影響は大きくみられなかったという。
 高級二枚貝として料亭やすし店などで扱われる広田湾産イシカゲ貝。陸前高田市では平成8年に全国で初めて養殖の事業化を実現。東日本大震災の津波で養殖施設が壊滅し、平成26年に出荷を再開した。
 広田湾漁協は、市などと連携しながらブランド化を推進し、豊洲のほか、関西や中部、東北の市場にも出荷している。昨年2月には、地域ブランドを知的財産として保護する国の「地理的表示(GI)保護制度」に、広田湾産イシカゲ貝として登録した。
 近年の出荷実績は令和元年度約43㌧、2年度約32㌧、3年度約62・5㌧、4年度約84㌧。同漁協は年間100㌧の生産を目指している。
 生産者でつくる同漁協広田湾産イシカゲ貝生産組合の熊谷信弘組合長は「GI制度をクリアし、昨季過去最高の水揚げに至った。『さあここから』という思いで今シーズンを迎えただけに、へい死は残念でならないが、受け止めるほかない」と語り、「その中で市場からは注文をいただき、それだけの商材に成長したということはありがたいこと。関係機関やさまざまな方の協力、支援のたまものだ」と感謝した。