「姥杉」の枝を地蔵尊に 常膳寺由来 東京の成就院に安置

▲ 成就院に安置されたみちびき地蔵尊と福田住職

 東京都台東区東上野の真言宗智山派・成就院(福田亮雄住職)にこのほど、陸前高田市小友町の気仙三十三観音霊場第二十七番札所・鶏頭山常膳寺(金剛寺・小林信雄兼務住職)の「姥杉」の枝を彫って作られた地蔵菩薩像「みちびき地蔵尊」が安置された。同院には、東日本大震災で被災した同市の高田松原のマツで作られた観音菩薩像「やすらぎ聖観音像」も安置されており、福田住職(56)は、陸前高田をルーツとする二つの像が、人々の心の安寧につながることを願っている。(阿部仁志)

 

 みちびき地蔵尊は、高さが本体65㌢、台座や光背を含めると1㍍ほど。右手に錫杖、左手に宝珠を持ち、柔和な表情を浮かべる。美しい木目や色合い、彫刻師の技が光る、細く均等に彫られた光背の光の線などが存在感を放つ。
 今年6月に成就院で魂入れを行い、8月の念仏会で寺院関係者らへお披露目。9月上旬、「与楽」と「抜苦」の二つのお堂からなる同院の納骨堂「称観堂」のうち、「抜苦」に安置された。
 対となる「与楽」には、約7万本あったとされるマツが大津波で流失した名勝・高田松原の被災木から作られたやすらぎ聖観音像が安置されている。住田町出身で盛岡市在住の仏像彫刻師・佐々木公一さん(48)の作で、みちびき地蔵尊も佐々木さんが手掛けた。古くから陸前高田を見守り続けてきた木が菩薩像に形を変え、称観堂を訪れる人々を見守っている。
 同地蔵尊の元となった枝は、樹齢1000年以上とされる常膳寺の県指定天然記念物「姥杉」の一部だったもの。
 同寺によると、枝は平成11年春に強い風で折れたもので、「幹のように太く、年輪は250年から260年分あるとみられる」という。県へ申告したうえで寺が管理し、13年には、同寺の秘仏「木造十一面観音菩薩立像」の中開帳の記念札を作った。札に加工されなかった枝の一部は保管し、気仙の同霊場を巡る「『祈りの道』再興プロジェクト」に参画する福田住職にこのほど託した。
 福田住職は、震災後から何度も気仙を訪問。今も被災者らの声に耳を傾け、大切な人やものを失った人々の心に寄り添いながら、年2回の同霊場「徒歩巡礼」を継続している。
 さまざまな人の思いが重なり完成した、今回の地蔵尊。福田住職は「細かな年輪から生まれた模様が、命の波動のようにも見える。東京に足を運ぶ機会があれば、気仙の住民や出身の方々にも見ていただきたい。過去を懐かしみ、悲しい思いだけでなく、楽しい思い出を語り合えるような場所となってほしい」と願う。