陸前高田に「考える人」 市立博物館で展示始まる 名古屋市から無償貸与 8年秋までの3年間(別写真あり)
令和5年11月4日付 1面

陸前高田市高田町の市立博物館(松坂泰盛館長)で「文化の日」の3日、フランスの彫刻家オーギュスト・ロダン作のブロンズ像「考える人」の展示が始まった。像を所蔵する名古屋市博物館(小林史郎館長)が大規模改修に入ったため、工事終了までの約3年間、友好館協定を結ぶ市立博物館に無償で貸与されることとなった。国内に4体しかないとされる貴重な美術品で、東日本大震災を機につながった両市の友好関係のシンボル的存在としても注目を浴びそうだ。鑑賞無料。(高橋 信)
現地で行われた受け入れ式
像は1階常設展示室入り口前の展示ロビーに置かれ、同日は現地で受け入れ式が行われた。佐々木拓市長は「この像が博物館同士の文化的架け橋となるだけでなく、文化・観光振興の推進、交流人口の拡大にも寄与するものと期待している」と喜んだ。
名古屋市博物館からは、木村広聖副館長が出席。「この地でいろいろな年齢、立場の人に見て、楽しんでもらいたい。そこから一歩進んで、両市の交流について思いをはせてもらえば、交流の裾野が広がり、友好関係が強く発展していくと思う」と展望した。
式後は来館者が次々と訪れ、じっくりと眺めたり、考える人のポーズを取って一緒に写真を撮ったりして、思い思いに鑑賞を楽しんだ。
大船渡市盛町の及川正子さん(77)は「予想以上に大きくて迫力がすごい。貸し出されるのはありがたいこと」と話した。
ロダンは「近代彫刻の父」と称される19世紀を代表する彫刻家。「考える人」は、名古屋市博物館の大規模改修に伴い、仮保管先が必要となったため、市立博物館に貸し出されることとなった。
陸前高田市教委や名古屋市博物館によると、像本体の高さは1・8㍍、重さは0・9㌧で、台座を含めると高さ3・1㍍、重さ1・4㌧。鋳造年は昭和49年。同じ大きさの像は世界に約20体、国内に4体しかないという。
名古屋市は震災後、陸前高田市の行政全般を「丸ごと支援」する独自の取り組みを展開。平成24年に両市教委が絆協定を、26年に両市が友好都市協定を結び、29年には両博物館が友好館としての協定を締結した。
市立博物館は震災で全壊し、中心市街地に再建され、昨年11月に開館。山田市雄教育長は「考える人の貸し出しは、開館1周年に大きな花を添えるものだ。両市の絆をより一層強めるシンボルとして愛され、親しまれてほしい」と願いを込めた。
同館の開館時間は、午前9時~午後5時。月曜休館。問い合わせは、同館(℡54・4224)へ。