来年度から工事本格化へ 市魚市場南側の係船岸壁延伸整備 運営委員会で県事業の概要説明

▲ 運営委員会で示された完成イメージ図

 令和5年度第1回大船渡市魚市場運営委員会は8日、大船渡町の同魚市場で開かれた。市側は、水揚げ施設や活性化施設の利用状況に加え、来年度から工事が本格化する県事業の係船岸壁延伸整備を説明。魚市場南側岸壁は大型サンマ船5隻が接岸できるが、盛漁期には入港が重なる。新たに135㍍の岸壁を設け、さらに大型船2隻が係留できる環境を整える。漁港施設用地も含め、8年度までの工事を見据える。(佐藤 壮)

 

 運営委は、魚市場の適正、円滑な維持、管理運営を図るために設置された市長の諮問機関。水産関係者、知識経験者の18人で構成し、この日は13人が出席した。
 委員は今月から新任期に入り、会長に越喜来漁協の舩砥秀市組合長、副会長には大船渡魚市場買受人組合の及川廣章組合長を選出。舩砥会長は「大船渡は『水産のまち』であり、魚市場は中核であるとともに、地域活性化の一翼を担っている大切な施設」と述べた。
 市側による説明・意見交換では、県が進める大船渡港における係船岸壁延伸整備の計画が示された。衛生品質管理の充実強化や水揚げ増強による水産物の安定供給に向け、3年4月に大船渡魚市場㈱をはじめとする関係者から要望書が提出されていた。
 これを受け、同年8月に県知事に要望書を提出。翌年4月に水産庁が計画を承認し、現在県が整備を進めている。
 水深7㍍岸壁の計画延長は135㍍。岸壁沿いの水域4340平方㍍で浚渫などを行い、水深7㍍の泊地を確保する。岸壁背後には、埋め立てなどで2100平方㍍の漁港施設用地も設ける。
 4年度から測量設計調査や用地買収・物件補償などが進み、6年度から岸壁、水域施設の各工事が本格化。いずれも7年度までの整備を見込む。漁港施設用地の工事は7~8年度に進める。これにより、200~300㌧級の大型船が、さらに2隻接岸・水揚げできる環境を整える。

サンマ盛漁期には南側岸壁に大型船がずらりと並ぶ

 市魚市場は、定置網船などの地元漁船に加え、県内外から多くの漁船が入港する三陸沿岸の拠点的な魚市場であり、特にサンマは本州随一の水揚げを誇る。イワシやサバなど、大型の巻き網船も接岸する。
 水揚げ時の交差汚染などを防ぐ観点から、漁業種や魚種で水揚げ場所を区分。魚種選別やタンクでの一時保管が必要な定置網などは埋め立て埠頭部の閉鎖型市場で対応し、サンマやイサダ漁、巻き網船など直接車両に積み込む魚種は、専用の南側岸壁で行っている。
 現在の南側岸壁は約290㍍で、大型サンマ船5隻が接岸可能だが、秋の盛漁期には入港が重なる。先月も10隻超に及ぶサンマ船の水揚げがあった際には、周辺岸壁での接岸や、海上で水揚げを待つ光景も見られた。洋上待機では、1隻当たり平均2時間程度の〝むだ〟が生じるとされる。
 今回の整備により、産地の競争力強化や輸出促進による水産業の成長産業化を見据える。さらに、今後発生が想定される地震・津波に対して漁港機能を維持できるよう岸壁の耐震・耐津波対策を進める。
 本年度上半期の水揚げ状況は、数量が9502㌧で前年度比19・4%減。一方、金額は19億7593万円で同21・8%増となった。魚種別の主な水揚げ実績(金額)をみると、サンマやブリ類、マグロが前年を上回った一方、サバやカツオが下回った。
 活性化施設利用状況のうち、4年度の延べ利用者数は2万8942人で、3年度から約3000人増加。2年度に新型コロナウイルスの影響で一般来場者、見学・視察、多目的ホール利用、飲食施設の全分野で大きく落ち込んだが、回復を続けている。