〝やさしいお店〟の拡大を 12月に初の講習会開催 チームオレンジの一環 事業者の認知症支援後押し
令和5年11月12日付 1面

認知症の人やその家族と、対応・支援策を知るサポーターとのつながりが全国的に重要視される中、大船渡市内でも関係機関による「チームオレンジ」の取り組みが進んでいる。広く参加を呼びかける初の活動として、12月6日(水)に市主催の「高齢者にやさしいお店講座」が開催される。高齢者の暮らしに身近な事業所・店舗に対し、認知症の理解とサポートの充実を後押ししながら、チームオレンジへの参画拡大を見据える。(佐藤 壮)
県によると、総人口に占める65歳以上人口の割合を示した大船渡市の高齢化率は、今年9月1日現在で39・2%。県内全域の34・8%を上回っている。数年後には高齢者の5人に1人が認知症か認知症の症状が疑われるとされる中、誰もが認知症になっても安心して住み慣れた地域で暮らし続けることができるまちづくりの重要性が増している。
市では本年度から「チームオレンジ」の取り組みを本格化。認知症の人やその家族と、認知症を支える人々をつなぎ、安心感のある暮らしや共生の地域づくりを見据える。
今夏には、社会福祉協議会や在宅介護支援センター、被災者の個別支援や災害公営住宅のコミュニティー醸成をサポートしている「きょうせい大船渡」、各地に設けられている「認知症カフェ」の関係者が集まり、課題や支援策を話し合った。「相談先が分かりにくく、不安」との意見を踏まえ、9月から相談先の電話番号などをまとめたカードを配布している。
認知症サポート体制の広がりには、地区内住民の取り組みに加え、職域サポーターの役割も重要になる。各店舗での「あるはずのない貯金を下ろしてほしいと繰り返す」「買うものをイメージできず店内をずっと歩いている」「初めて来たかのように何度も来店する」「会計前の商品を持ち帰る」「同じ話を繰り返す」といった場合の対応などに関する知識を深め、認知症やその家族を支える地域づくりや支援充実につなげようと、市は新たに講習会を企画した。
「高齢者にやさしいお店講座」と題し、12月6日午後6時30分から盛町のリアスホールで開催する。市地域包括ケア推進室職員による説明に加え、福岡県若年性認知症サポートセンターの阿部かおりセンター長による講義も予定している。
阿部さんは昨年、認知症当事者が買い物で支払いを忘れてしまうと万引行為にみなされてしまう状況を事業所などとともに考える「認知症の方の未払い行動を考えるシンポジウム」の開催を通じて、全国に実態などを発信。東日本大震災以降、末崎地区などでのまちづくり活動支援でも知られる。
介護関係事業所や郵便局、金融機関、スーパーをはじめ、高齢者の暮らしに身近な店舗・事業所の各関係者が対象。受講した事業所には「高齢者にやさしいお店」を示すステッカーを贈る。
さらにチームオレンジのメンバーとして登録され、市ホームページなどで情報発信も行われる。こうした活動を通じて、認知症へのサポート強化に加え、利用しやすいサービスや環境整備、人材育成などにつなげる。
申し込みは、今月29日(水)まで市ホームページなどで受け付ける。問い合わせは市地域包括ケア推進室(℡26・2943)へ。
市が描くチームオレンジの整備イメージは別掲。