〝海の小判〟浜にキラリ 越喜来、広田湾両漁協で今季アワビ漁がスタート 気仙沿岸(別写真あり)

▲ 光沢あふれる〝海の小判〟を並べて選別作業にあたる関係者=崎浜漁港

 気仙沿岸で15日、今季初めてアワビ漁が口開けとなった。この日の大船渡の最低気温は2・3度(平年比1・8度低め)。近づく冬を感じさせる冷え込みの中、漁業者は長いカギさおをたくみに操りながら漁獲し、集荷作業では笑顔を交わした。今季は夏場以降の海水温上昇や、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出に伴う中国の禁輸措置の影響などが懸念される中、今後の動向に注目が集まる。(佐藤 壮)

 

 アワビは例年1日から解禁となり、漁協・地区ごとになぎの状況などを踏まえて開口日を定める。大船渡市三陸町の越喜来漁協(舩砥秀市組合長)では専属分の開口となった。初開口は昨年に比べると8日遅い。
 きりりと冷え込んだ海上では、漁開始の午前6時30分を前に、各漁船が見定めた漁場で待機。開始時刻になると、箱めがねで海中をのぞき、アワビを漁獲した。
 集荷場の一つである崎浜漁港では、漁を終えた船が帰港し、慌ただしく選別作業が行われた。光沢あふれる〝海の小判〟を囲み、互いに漁況を報告しながら笑い声が響く光景も見られた。
 漁を終えた小西正晃さん(53)は「いることはいるが、もっと肥えてくれれば。価格も上がってもらいたい」、東良也さん(85)は「アワビ漁は漁師にとってのボーナス。この年齢だから、今は楽しみの一つとして海に出ている」と語り、笑顔を見せた。
 漁協によると、収量は971㌔。昨年の初日を上回り、資源回復の兆しをうかがわせた一方で「痩せアワビも多い」といった声も聞かれた。今月は、吉浜漁協との入会でも1回予定している。
 舩砥組合長(76)は「計画を上回る量を期待しているが、今年は記録的な高水温に見舞われ、難しいところもあると思う。価格の動向は、中国が早く禁輸措置を解除することを願うしかない。温暖化で環境が変化し、漁が厳しくなっている中でみんな頑張っており、東電や国は風評被害への対応をしっかりと行ってほしい」と話していた。
 この日は、陸前高田市・広田湾漁協管内の広田、小友地区でも開口。収量は広田地区は2・5㌧、小友地区は91㌔だった。
 今季のアワビ漁は資源量に加え、福島第一原発の処理水海洋放出開始による風評被害の影響が懸念される。
 中国は日本産水産物の輸入を停止。主力市場である香港は、国内10都県の水産物輸入を禁止し、岩手県は対象外となっているが、香港から中国向けに流通するものもあるほか、香港自体の景気動向にも左右されるなど、昨年以上に不透明要素が多い。
 気仙では今月、綾里を除く4漁協で開口を予定。先月26日に事前入札会が行われ、水揚げ予定数量は18・5㌧、10㌔当たりの平均価格は7万9503円で、前年の10万7000円台から26%下落した。