「誰一人取り残さないまち」構築へ SDGs未来都市の東北自治体参加 課題と展望探るシンポジウム開催

▲ 誰一人取り残さないまちづくりをテーマに意見交換したパネルディスカッション

SDGsに関する取り組みを発表した高田高生

 陸前高田市主催の東北SDGs未来都市シンポジウムは16日、高田町の市コミュニティホールで開かれた。同市をはじめ、内閣府のSDGs未来都市に選定されている東北の自治体関係者や市民らが参加。基調講演やパネルディスカッションを通じ、持続可能でよりよい社会を実現するための世界共通の目標「SDGs」達成に向けた課題と展望を探った。(高橋 信)

 

 約60人が参加。開催市を代表し、佐々木拓市長は「東日本大震災後のハード復旧が山場を越え、今後は真の復興へにぎわいづくりに力を入れていく。そのうえでもSDGsの取り組みを展開していきたい。今後に生かす素晴らしいシンポジウムとなるよう期待している」とあいさつした。
 基調講演は、SDGsに関する研究に当たる法政大デザイン工学部の川久保俊教授が講師を務めた。
 川久保教授は、国内におけるSDGsという言葉の認知度が飛躍的に向上している現状に触れたうえ、「表面的な理解にとどまっている。(17のゴールにひもづく)ターゲットレベルまで理解して」と指摘。先進自治体の事例を紹介し、「SDGs達成に向け、地域の特色を生かしたまちづくりを強く訴えると、共感が生まれていろいろな人、情報、資金が集まることがある。共通言語であるSDGsをうまく活用し、巻き込んでいくことが重要だ」と強調した。
 パネルディスカッションは、川久保教授、脳性麻痺で車いすを使って生活する陸前高田市の介護職・高橋未宇さん、同市のまちづくり会社・陸前高田ほんまる㈱社員・種坂奈保子さん、市土地活用推進課長・髙橋宏紀さんの4人がパネリストとして登壇。㈱日経BPの高津尚悟さんがファシリテーター(進行役)を務めた。
 テーマは同市で推進されている「誰一人取り残さないまちづくり」。高橋さんは「交通網が確保されることは誰一人取り残さない『住みやすいまち、住み続けたいまち』につながる。災害に強いまちも住みやすいまちに直結し、共助のためには日頃からのつながりづくりが重要。まちがそんな良いモデルになれるよう、自分なりにできることを考えていきたい」と展望した。
 愛知県出身で、震災後同市に移住した種坂さんは「『後世まで思いやり、陸前高田を優しさと好奇心にあふれた、世界一暮らしたいまちにしていく』というのが会社の理念。100年後、200年後、自分の子や孫が誇りを持ち、いつか帰ってくるまちを目指していく。そのために一人一人が力を発揮できるような取り組みやイベントを実施していきたい」と見据えた。
 最後に、地元の高田高生8人がSDGsに絡む自校での取り組みを発表。生徒の探求活動や地域貢献活動、進路活動などを網羅した同校独自の取り組み「T×ACTION(タクション)」の成果を紹介し、「SDGs達成のため、タクションに取り組み、地域とも積極的に関わっていく。高校生活を全力で楽しむ様子を社会に発信していく」と決意を述べた。
 SDGs未来都市は、持続可能なまちづくりに向けて優れた取り組みを推進している自治体を指す。東北では16自治体が内閣府から選ばれ、陸前高田市は、県内では最初となる令和元年に選定された。
 東北の選定自治体が連携し、互いの取り組みを共有するイベントは平成30年度に始まり、これまでは各首長が集うサミットを実施。令和2~4年度は新型コロナウイルス禍で中止し、本年度はシンポジウムという形で陸前高田市で初開催された。