日本庭園プロジェクト始動 屈指の庭師・北山安夫さん代表の法人が整備 気仙町今泉地区に 「地域とともに憩いの場造る」

▲ 鎮魂の庭プロジェクトの概要を説明した北山さん(左端)や佐々木市長(右端)ら関係者

 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた陸前高田市気仙町今泉地区の気仙川沿いに、鎮魂をテーマとする日本庭園を造ろうという壮大なプロジェクトが立ち上がった。市役所で20日、プロジェクトに関する記者会見があり、日本を代表する庭師で、整備を担う一般社団法人日本庭園芸術協会代表理事の北山安夫さん(74)が構想を説明した。市民や観光客の憩いの場となるよう地域の意見を反映しながら作庭する方針。3~5億円程度を見込む総工費は寄付や市の企業版ふるさと納税を充当することとし、1億円が集まり次第、着工する計画だ。(高橋 信)

気仙川右岸の整備予定地


 北山さんは、京都御所や桂離宮など国内の主要な日本庭園を管理。代表作は、建仁寺「潮音庭」、「愛・地球博」の日本庭園などで、海外でも作庭を手掛ける。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で日本庭園の監修もした。
 記者会見には、北山さんや佐々木拓市長らが臨んだ。北山さんや同協会役員が「鎮魂の庭」プロジェクトの概要を説明した。
 整備地は、市が震災後宅地などまちの土台を整えるため導入した土地区画整理事業区域内の平地部1・5~3㌶。国道45号気仙大橋そばの気仙川右岸に広がる市所有の未利用地を活用する。
 今泉地区は、江戸期を中心に旧気仙郡の政治、経済、文化の中心地として栄えたが、震災の津波で甚大な被害を受けた。同協会は日本庭園を通じて地域の文化・歴史を発信し、今泉の再興に寄与しようと、市との協議を経て同地区への整備を決めた。
 現段階では、園の中央に大きな池を整備して敷地を囲むようにマツを植える構想。三つの滝を配置し、水が滝つぼに落ちる音を楽しめるようにする。今後、地区住民らから寄せられた意見も庭造りに生かすこととしている。
 工費は3~5億円程度を想定。同協会は企業や団体、一般から寄付を募り、市は企業版ふるさと納税で整備費に充てる寄付を受け付ける。震災で流された石を石組みに再利用するなど、最大限費用の削減に努める。
 工事は前期、中期、後期の三段階に分けて実施し、工期は最長10年を見込む。同協会は現時点で着工時期や完成時期を明確に定めず、「1000年先も震災を語り継ぐ鎮魂の庭」を地域や全国の賛同者らとの協働で造り上げようと、腰を据えてプロジェクトを推し進めたい考えだ。
 市によると、土地区画整理事業区域内の宅地103・5㌶のうち、活用されているのは9月末時点で55・6㌶で、利用率は53・7%。今泉地区の利用率は32・8%で、このうち、平地部は今回の日本庭園の敷地を含めて60%となっている。
 佐々木市長は「北山さんからは、今泉地区の住民の思いを聞き、庭に込めるという強い思いをうかがった。市民の心が安らぐ庭が出来上がってほしい」と期待を込める。
 北山さんは「地域の人がこの庭園の中で何を求めるかという意向を大事にしていきたい。ぜひ地域から意見を寄せてほしい。皆さんが心から喜んでもらえる庭園を目指して造っていく」と決意する。