気仙ボケ一座 認知症啓発へ寸劇300回 高田東中で節目の公演 活動継続への思いも新た(別写真あり)
令和5年11月22日付 7面

気仙3市町の有志らでつくり、認知症に関わる寸劇を各地で披露しているボランティア劇団「気仙ボケ一座」(内出幸美座長)は21日、300回目となる公演を陸前高田市の高田東中学校(伊東孝志校長、生徒167人)で行った。「認知症への理解を広めよう」と平成6年から続けてきた取り組みが節目を迎え、関係者は継続への思いを新たにしている。 (阿部仁志)
ボケ一座は、認知症の人が全国的に増える将来を見据え、6年9月に大船渡市の社会福祉法人典人会が運営するデイサービスセンター職員ら、有志が集まって公演を行ったのが始まり。
翌7年には旧気仙呆け老人をかかえる家族の会(現認知症の人と家族の会)を母体とする「気仙ボケ一座」として旗揚げし、以降、地域の公民館や学校、全国や国外からの依頼も受けながら寸劇を披露している。
寸劇では、暗いイメージになりがちな認知症の問題をユーモラスな演技で笑いも取り入れながら説明。認知症の人と家族の暮らしを視覚的に示し、気仙の方言を交えたり、訪問先の関係者にエキストラで出演してもらうなど、親しみやすく、記憶に残りやすい内容で好評を博している。
記念すべき300回目の公演となった今回は、高田東中2年生を対象とした「認知症講座」の中で、メンバー約10人が寸劇を披露。「物忘れの違い」と「ごはん戦争」の2題を演じた。
このうち、「ごはん戦争」では、認知症の人に対する家族の接し方の良い例と悪い例を紹介。認知症の高齢女性と息子夫婦のやりとりを2パターンで演じ、「ボケたから何もできない、は大間違い。認知症の人にも家での役割をもってもらうことが大事」「寄り添うことが相手の自信につながる」などとまとめた。
笑いを誘う〝地元ネタ〟を随所に盛り込み、生徒や教員がエキストラとして登場する場面もあり、節目の公演は大いに盛り上がり、生徒たちは楽しみながら認知症に対する理解を深めていた。佐々木琉輝空さんは「とても分かりやすく、認知症の人には優しく接したいと思った」と語った。
生徒から記念の花束を受け取った内出座長は「活動を始めて29年。寸劇を見て祖父母との接し方が変わったという中学生の話を聞くなど、うれしいこともあった。今後も新作の寸劇を考えるなど活動を続けていきたい」と話していた。