交流空間の創出に光 環境省の自然歩道関係功労者表彰  越喜来の片山さん受賞 震災伝承施設「潮目」を開設(別写真あり)

▲ 受賞を喜ぶ片山さん夫妻

 環境省による令和5年度自然歩道関係功労者表彰に、大船渡市三陸町越喜来の片山和一良さん(72)が選ばれた。みちのく潮風トレイル全線開通前年の平成30年、現在地に仮設店舗のプレハブ施設などを生かして震災伝承施設「潮目」を再建。今では国内外のハイカーが集い、地域住民らとの交流が広がる空間として知られる。妻の月江さん(69)とともに受賞を喜び、さらなる出会いに期待を膨らませる。(佐藤 壮)

 

 表彰は潮目で20日に行われ、環境省東北地方環境事務所の田畑慎之介課長らが訪問。同省自然環境局長名の表彰状と記念品を手渡した。片山さんは「思いがけない表彰を受けたが、これからも気負わずに、自分が楽しむことをモットーにしたい」と語った。
 環境省では、自然歩道の維持や管理、適正利用などで顕著な功績があった個人・団体をたたえようと表彰。本年度は全国で2個人・6団体が選ばれた。
 三陸鉄道三陸駅近くの潮目は、廃材を生かしたカラフルな外観が目を引く。みちのく潮風トレイルは青森、岩手、宮城、福島の4県にまたがり、総距離1000㌔超に及ぶ中、潮目は中間付近に位置する。水の補給、トイレ、休憩に加え、テント場も提供し、長距離を巡るハイカーに必要不可欠な空間となっている。
 常に気さくな笑顔でハイカーを出迎える。気兼ねなく滞在でき、最近は、外国人の来訪も多い。潮目の存在は、トレイル愛好者の間で広く知られるようになった。
 ハイカーとの交流や会食機会の創出だけでなく、何気ない会話を通じて、事故やトラブルの未然防止にもつながっている。三陸復興国立公園内の美化清掃、草刈り、障害物除去にも精力的に取り組んできた。活動を手本として他地域でも同様の取り組みは始まりつつある。
 「潮目」は、海流がぶつかって多くの魚が集まる場所のように、「人と人とが交わり合う場になってほしい」という願いを込め、平成24年7月に片山さんが津波で被災した旧越喜来小跡地向かいに建設。長年、土木分野に携わってきた中、資材は震災で発生した廃材などを用い、当時からさまざまな場所の人々が集う場となっていった。
 その後、イチゴ農場整備のため30年11月に解体されたが、片山さんが自身の私有地に再整備。大船渡町にあった理容店「ニュー清水」の仮設店舗なども移設し、現在は地元の子どもたちの遊び場や震災伝承、コミュニティーづくりの場としての役割を果たしている。
 震災復興の支援者や、各地を巡るハイカーを通じて、片山さん夫妻は地元・越喜来をはじめ三陸の魅力を再認識させられる。「例えば、夏虫山に連れて行くと、眺望に感動する。地元の良さに気づかせてくれる」と片山さん。人が行き交うことで、新たな発見や喜びが生まれる。施設の名称に込めた思いが今、体現されている。
 月江さんに対しては「私にはブレーキがない。ブレーキやクラッチの役割を果たしてくれているから、好きなことをできている」と感謝を忘れない。月江さんの手料理も、訪れた人々の心を癒やす。
 片山さんは「『潮目』とは形ではなく、最終的には人がつくり出しているもの」とも話す。今後もハイカーらとの出会いを心待ちにする。