台湾で観光誘客PRへ 大船渡市と住田町 定住自立圏事業で来月初出展
令和5年11月23日付 1面

大船渡市と住田町が締結した定住自立圏構想に基づき、両市町の事業所関係者らが、台湾・台北市で12月に行われる東北旅行促進に向けたPRイベント「日本東北遊楽日2023」(一般社団法人東北観光推進機構主催)に参加する。大船渡・住田定住自立圏としての取り組みの一環で、初めてブースを設置。食や宿泊、体験などの魅力をアピールし、観光関連の体験にも力を入れる。関係者は誘客に加え、広域でスクラムを組んでのツアー造成といった発展に期待を込める。(佐藤 壮)
定住自立圏は、一定の要件を満たした市(中心市)と近隣市町村が連携、協力し、必要な生活機能等を確保することで地域における定住の受け皿となるもの。大船渡市と住田町は、同市が生活機能の確保で中心的な役割を担う中心市となり、令和元年10月に定住自立圏形成協定を結んだ。
協定に基づき、令和2~6年度の5年間を期間とする共生ビジョンを策定。広域観光の推進では、外国人観光客向けの観光ルート造成や受け入れ体制の整備を図り、広域観光プロモーションを展開する。両市町における外国人の観光客入込数は平成30年は761人だったが、令和6年には1485人まで伸ばす目標を掲げる。
今回の出展は、共生ビジョンの一環。両市町が連携し、県の外国人観光客で最重要市場である台湾のインバウンド誘致、拡大につなげようと初めて出展する。大船渡市内4事業者、住田町内1事業者が参加を予定し、両市町や市観光物産協会の担当者らが同行する。
一行は12月7日(木)に出国。8日(金)には、台湾の台北市内で台湾側の旅行代理業・航空会社との商談会に臨む。
「日本東北遊楽日」は9日(土)と10日(日)に開催。大船渡市と住田町をPRするブースを設け、パンフレットなどを配布する。
台湾からの旅行者は「写真映え」する場所を好む傾向があることから、実際の来訪につなげようと「恋し浜のホタテ貝殻絵馬」の体験を企画。ブース内には、三陸鉄道・恋し浜駅の風景や、実際に設置されている写真、絵馬が掛けられるような装飾を施す。使用した絵馬は恋し浜駅で展示し、SNSで発信することで、来訪意欲につなげることにしている。
さらに11日(月)と12日(火)には、台北市内の旅行業者を訪問。両市町の強みをアピールする。
今月21日には、大船渡市大船渡町のおおふなぽーとで、事前研修会を開催。事業を受託しているインアウトバウンド仙台・松島(宮城県仙台市)の担当者が事業概要や滞在スケジュールなどを説明した。ブースに掲げるPRグッズや、新たに作成した台湾向けパンフレットも確認した。
引き続き、台湾出身で通訳・コーディネーターを手掛けるチェン・ポーハンさんが「台湾旅行博と商談会攻略」と題して解説。「台湾の個人客は、3カ月~半年前から旅行予定を立てている。これを見越した情報提供を」と述べ、通訳との連携、団体客と個人客でのアピールの使い分けなどでもアドバイスを送った。
数日かけて岩手を訪れる台湾人旅行客が気仙各地を回るよう、旅行行程を考える時間も。食事、体験、宿泊とそれぞれの強みを組み合わせたアピールの大切さも確認し合った。
大船渡市三陸町綾里でアワビ事業を展開する元正榮北日本水産の古川季宏社長は「新型コロナウイルスの影響や福島第一原発の処理水放出に伴う中国の禁輸措置もあり、海外展開は仕切り直しの状態。商品購入だけでなく、施設見学にも力を入れている。現地の様子を感じながら、可能性を見いだしたい」と話す。
住田町上有住の滝観洞で施設管理を担う住田観光開発の千葉孝文専務は「住田を巡るツアー構築はもちろんだが、気仙広域の視点も大切。滝観洞は、花巻空港から訪れる旅行客にとって最初の観光地になり得る。イベント参加だけでなく、準備段階の話し合いでもヒントはある」と、今後に期待を込める。