小山四段(釜石出身)と夢の時間 ふれあい将棋フェスタ 宮城の団体が初開催 愛好者・指導対局受け交流
令和5年11月24日付 7面

宮城県内で将棋イベントを手掛ける「多賀城将棋ラボ」(出原卓朗代表)は23日、陸前高田市高田町の高田松原津波復興祈念公園管理事務所で、「陸前高田ふれあい将棋フェスタ」を開いた。釜石市出身で、本県初の将棋プロ棋士・小山怜央四段(30)=東京都=が特別ゲストとして参加し、指導対局を行った。参加者は岩手将棋界の希望の星である小山四段と対面で交流し、楽しいひとときを過ごした。(高橋 信)
多賀城将棋ラボは東日本大震災後、宮城県内で活動。本年度、岩手、宮城、福島の被災3県で将棋を通じた地域活性化を図る新たなプロジェクトを立ち上げ、今回は宮城県外での第1弾イベントとして企画した。
この日は岩手、宮城、福島各県の愛好者ら約30人が参加。1人5局を指す交流大会と小山四段による指導対局が繰り広げられた。
大会では小学生と高齢の愛好者が対局するなど、世代を超えた白熱の攻防を盤上で展開。小山四段は、幅広い世代を相手に多面指しで指導対局に臨み、感想戦で丁寧に解説した。小山四段のサイン色紙などが当たる懸賞クイズも行われた。
指導対局を受けた盛岡市の白間太陽さん(見前南小6年)は「すごく強かった。小山四段のようになりたい」と目を輝かせた。
大船渡高将棋愛好会の佐藤友紀さん(1年)は「小山四段が同じ会場にいて緊張する。岩手初の棋士として頑張ってほしい」とエールを送った。
小山四段は中学3年で棋士養成機関「奨励会」を受験するも不合格。釜石高2年の時に震災に遭い、自宅を失った中で棋力を磨き続けた。
県立大に進学し、多くのアマチュアタイトルを獲得。その後、奨励会の三段リーグ編入試験に挑んだものの突破ならず、大学卒業後は一般企業に勤めながらプロ棋士との対局などで実力を示し、プロ棋士編入試験の受験資格を得た。
試験では昨年11月から若手プロ棋士相手の五番勝負に挑み、3勝1敗と勝ち越して見事合格。今年4月にプロ棋士としてデビューした。奨励会を経験していないアマチュアからのプロ入りは戦後初めてで、県内外から注目を集めている。
小山四段は「岩手にはやはり特別な思いがあり、きょうも参加できてとてもうれしかった。会場には子どもたちの姿も見られ、一緒に将棋ができて楽しかった」と笑顔。震災後初めて陸前高田を訪れたといい、「陸前高田や釜石を含む三陸沿岸が盛り上がってほしい。そのためにも棋士として頑張っていく」と決意を新たにした。