スマホ対応充実へ前進 デジタル創生研究プロジェクト・チーム 若手職員グループが成果発表
令和5年11月25日付 1面

大船渡市デジタル創生研究プロジェクト・チームの成果発表会は24日、市役所で開かれた。若手職員を中心とした各グループは、市公式LINE(ライン)の機能活用につながる内容に加え、行政運営でも注目を浴びる生成人工知能(AI)に関する研究の報告も。現状課題を洗い出しながら、市民の多くが所有するスマートフォンを生かした利便性向上を強調した。市は発表内容を生かし、情報発信体制の充実を図る。(佐藤 壮)
デジタル創生研究プロジェクト・チームは、デジタルの力を活用した社会課題解決を図るため、昨年度に市が設置。係長・主任・主事級の職員を中心に22人で構成。インターネットサービスが普及してきた時期以降に生まれた、30代以下の職員が多い。
同市デジタル推進アドバイザーを務めるソフトバンク㈱の磯崎靖彦氏から助言を受けるとともに、他自治体の先進事例を研究しながら、グループワークなどを通じて市の課題の洗い出しや解決策を検討。本年度進めてきた研究成果の発表会には、渕上清市長や引屋敷努副市長をはじめ、市幹部職員ら約40人が出席した。
発表は「公式ラインの機能拡充」「行かない窓口、日直改革」「生成AIの活用」のグループごとに行われた。
このうち、公式ラインの機能拡充では、さらなる利便性向上への道筋を示した。公式ライン登録者は3100人余で、市人口の1割を下回る。ラインで各機能を選択すると、多くが市ホームページに進む流れとなっている中、現状課題として、「市ホームページはメニューの選択肢が多くて迷ってしまう」「バナーが乱立して見にくい」などを挙げた。
また、市ホームページにアクセスする端末の内訳では、6割以上がスマートフォンをはじめとした「モバイル」。パソコン画面ではバナーやアクセスが整理されているが、スマートフォンでの小さい画面では表示しきれず、バナーが多いためページ全体が縦長になっている現状も指摘した。
そのうえで「ラインでは案内可能な情報の拡充を。申請手続き・自動返答などの新機能を搭載する」「ホームページはシンプルで迷わないデザイン・構成に。スマートフォンでもデザイン性を保つ」を提言。小さい画面でも圧迫感のないレイアウトの重要性を示したほか、休日・夜間を問わない手続き対応や緊急情報発信の充実にも言及した。
「行かない窓口」のグループも、ラインにあるメニュー機能拡充の観点から説明。平時から避難行動などを確認できる防災メニューの追加に加え、ごみ分別に関しては「AIチャットポット」を生かし、住民からのキーワードや画像をもとに、ラインの画面上で回答が示される流れを示した。ごみの分別に関する問い合わせは、年間3600件に及ぶといい、電話対応などの負担軽減が期待される。
生成AIに関しては、案内文書の作成や表計算ソフトで用いた関数の確認など業務時間短縮の可能性に触れた一方、個人情報や機密情報を含む業務データとの連動への課題も指摘。今後も利用に関するガイドライン案検討を進める方針を示した。
発表後、アドバイザーの磯崎氏は「デジタル・トランスフォーメーションは、意識改革と副次効果の議論が根幹。単なるアイデアの『イエスか、ノーか』ではなく、そこから派生し、創出されるであろう効果の議論を深めてほしい」とアドバイス。渕上市長は「今後も、職員が部課を超えて〝横軸〟に連携してほしい。人と人との関わりが根底にあることを確認しながら取り組みを」と期待を込めた。
市では、公式のラインやホームページに関して、今回の発表をもとにしながら、来年度に機能拡充を進める方針。昨年度プロジェクト・チームが議論を進めた市役所窓口の「書かない×ワンストップ」の導入も、窓口担当課による実装に向けた協議が進んでいる。