デマンド交通にAI活用検討 年度内策定の公共交通計画案に記載 令和6~10年度内の導入目指す
令和5年11月26日付 1面

陸前高田市は、予約型の乗り合いタクシー「デマンド交通」の運行システムに人工知能(AI)を取り入れられないか検討に乗り出す。利用者の予約に応じ、AIが最適なルートを生成する仕組みで、利便性の向上、運行の効率化などが期待される。年度内の策定を目指す市地域公共交通計画の素案に新たな施策として盛り込んでおり、同計画期間である令和6~10年度内の導入を構想。市民の移動手段充実、持続可能な公共交通体系の構築を見据え、デジタル技術を活用した展開へアクセルを踏む。(高橋 信)
地域公共交通計画の素案は、24日に夢アリーナたかたで開かれた市地域公共交通会議で示された。12月4日(月)から同計画のパブリックコメント(意見公募)を行う。
デマンド交通は利用者の自宅まで順番に迎えに行き、指定する停留所まで送るサービス。▽矢作町の一部地域(中平、坂下、小黒山)▽気仙町▽小友・広田町――の3エリアを対象に、それぞれ平日に1日4便(行き2便、帰り2便)運行している。
利用する場合は乗車前日までの電話予約を受け付けているが、利用の改善を図ろうとAIの活用を探る。
新システムが導入されれば、スマートフォンなどにインストールした専用アプリからの予約が可能になる。複数の乗客が乗り合ったり、運行中に別の予約が入ったりした場合も、AIが最適なルートを判断するため、事業者側にとっても運行の効率化が期待される。
市は来年度以降、市内全域を対象エリアに実証実験を実施したい考え。実験での成果と課題を踏まえ、本格導入できるか検討する。既存の電話での予約と併用し、利用者、事業者双方にとってより良い移動手段の構築を目指す。
また、市は6年度から10年度の間に、地域公共交通の運行経路を見直し、沿線利用者の利便性改善を図る。
現在は通年同じダイヤで運行しているが、自宅からバス停留所まで遠い人などのために、停留所以外でも乗り降りできる「フリー乗降制」の適用エリアを現行よりも拡大し、住宅が密集する狭い道路などを通る経路に改める。路面凍結などのおそれがある冬季は安全性を重視し、広幅員の道路を走行する。
現在、5路線で運行しているスクールバスに、市民も乗車できる「混乗」制度の導入も検討する。スクールバスの一部路線は、他の路線バスと経路が重複しており、効率化につながりうる。児童・生徒の保護者など関係者らとの協議のうえ、6~10年度内の実施を目指す。
市地域公共交通計画は、平成31年3月に策定した市地域公共交通網形成計画の後継計画。▽計画の概要▽地域公共交通に関する実態▽基本理念と計画の目標▽目標を達成するためのプロジェクトの概要▽計画の推進に向けて──の5章構成となっている。
パブリックコメントの受付期間は、12月4日~28日(木)の25日間。素案は市内11地区にある各地区コミュニティセンターや市立図書館、市役所まちづくり推進課窓口で閲覧でき、市ホームページでも公開する。