震災の記憶と教訓 次代へ 気仙両市の小中学校 追悼や防災の取り組み続く

▲ キャンドルホルダーを彩る絵や文字を描く児童ら

 東日本大震災を経験していない世代が増え、記憶や経験をつなぐことの重みが増す中、気仙では学校や地域で、地道な取り組みが続いている。大船渡、陸前高田両市の小中学校では27日、来年3月の東日本大震災追悼行事に向けたキャンドルホルダー作りや、大規模災害時を想定した避難所運営のシミュレーションが行われ、古里への思いや備えの大切さへの意識を新たにした。(阿部仁志、菅野弘大)

 

キャンドルホルダー制作に参加/高田小

 

 陸前高田市の高田小学校(熊谷広克校長、児童164人)は27日、来年3月に市内で催される行事「つむぐイルミネーション」に向けて、キャンドルホルダー作りに取り組んだ。児童が自分の夢や好きな物事、古里への思いを絵や文字で表し、復興が進んだまちに暖かい光がともるよう願いを込めた。
 つむぐイルミネーションは、同市出身の有志らでつくる「つむぐ」実行委員会(松村幸祈委員長)が、震災犠牲者の追悼や明るい未来を思い震災発生の3月11日に合わせて毎年市内で開いているもの。
 通算10回目を迎えた今年3月は、市内の小中学生や有志、全国から寄せられた約500個のキャンドルホルダーや光輝くモニュメントなどを高田町の川原川公園に設置した。来年の11回目は、3月9日(土)~11日(月)の3日間、同公園で催される予定。
 これに向けて、取り組みに賛同する市内の学校は、キャンドルホルダー作りに参加している。高田小も輪に入り、この日は3~6年生100人が作業した。
 キャンドルホルダーは、乾くとシール状になる特殊なインクを使って絵や文字などを描き、透明なビンの表面に貼れば完成。
 児童らは、かわいらしい動物や人気アニメのキャラクター、スポーツ、奇跡の一本松などを表現。欲しい色がないときはインクを混ぜ合わせて新しく作り、多彩で明るい作品に仕上げた。
 30日(木)には、描いた絵や文字をビンに貼り付ける作業を行う。
 佐々木旺介さん(5年)は、プロ野球・千葉ロッテマリーンズで活躍する同市出身の佐々木朗希投手の名前やチームロゴを描いた。「震災は、朗希選手が陸前高田から大船渡に引っ越すきっかけとなった出来事。そこから頑張ってプロになった朗希選手が来年も活躍してほしいという願いを込めた」と語った。
 実行委の覚張あゆみさん(38)=米崎町=は「震災で真っ暗になったまちを明るくしたい、という思いから始まった活動。震災を知らない世代が増えていく中、つむぐの取り組みが、記憶や人の思いをつなぐきっかけになってほしい」と願っていた。

 

地域住民交えて避難所運営体験/東朋中

避難者役の地域住民を案内する東朋中の生徒㊨

 大船渡市赤崎町の東朋中学校(佐藤学校長、生徒119人)は同日、同校で避難所運営体験を行った。3年生43人が主体となって対応したほか、1、2年生に加えて赤崎、綾里地区の地域住民らが避難者役で協力し、有事における具体的な動きを確認した。
 避難所運営体験は、統合前の赤崎中時代から続けられているもの。本年度は、県地域防災サポーターの塚本清孝さんを講師に招き、地域住民の協力も得て実施した。
 体験は、マグニチュード9・0の巨大地震と5㍍の大津波が発生し、市指定の第2避難所となっている同校へ避難所の立ち上げ要請があったとの想定で実施。1回目は全校で行い、2回目は住民らも避難者役で参加した。
 3年生は▽本部▽受付▽案内▽保健衛生▽物資──の各係に分かれ、次々に訪れる避難者を誘導。受付時に体調や考慮すべき点を確認し、妊婦や要配慮者、車いす、ペットなどと分け、各スペースに案内した。
 物資係は飲み物や毛布などを必要な人に配り、保健衛生係はけが人を担架で運んだり、体調不良の人への対応にあたった。本部では避難所全体の状況を把握しながら、避難者の様子や各係の動きに合わせて指示を送り、重要な情報をアナウンスするなどして円滑な運営に努めた。
 塚本さんは「運営にあたった生徒の皆さんは、私の想像を超えてよく動いていて、避難所運営体験に毎年取り組んでいる知恵がついていると感じ、私も非常に勉強になった」と講評した。
 保健衛生係長を務めた金野陽由さん(3年)は「避難者の体調が悪化する前に素早く対応することを心がけ、本部やほかの係とも連携しながら協力して進められた。もし避難所を運営する状況になったら、この体験を生かして一人一人を大切にして対応できるようにしたい」と話していた。