敷地造成工事が本格化 旧県立病院跡地に「おおふなと防災公園」 来年度の供用開始見据え
令和5年11月30日付 1面

大船渡市大船渡町地ノ森地内の旧県立大船渡病院跡地で、市による「おおふなと防災公園」整備に向けた敷地造成工事が本格化している。約6600平方㍍の公園に加え、周囲の市道を最大で約3㍍拡幅。園内には芝生広場や駐車場、トイレなどを設け、来年度の建築工事が終了次第、供用開始となる見込みだ。12年前の東日本大震災では市内で最も早く仮設住宅団地が建設された場所でもあり、市は一時避難や応急仮設住宅を迅速に整備できる場としての利活用も想定している。(佐藤 壮)

公園内の施設概要イメージ
敷地造成工事は、先月行われた入札の結果、亘理建設㈱と8965万円で契約。今月6日には、地元住民向けに工事説明会が行われた。
市が示した概要によると、公園面積は6620平方㍍。このうち、北側の芝生広場は3392平方㍍で、グラウンド・ゴルフなどの利用も想定。アスファルト舗装の駐車場は1070平方㍍で、43台分を確保する。
大型車両の乗り入れやバーベキュー利用などに対応できる敷砂利のスペースは951平方㍍。芝生広場の西側には、あずまややかまどベンチを設置。ソーラー照明は5カ所に設け、電源機能も設ける。3カ所に日陰にもなるハナミズキを植えるほか、敷地全体を囲む形でドウダンツツジやレッドロビンの植栽も施す。
造成工事は来年3月まで。新年度にあずまやなどの建築工事を発注し、完成次第、供用開始となる。市内各地にある都市公園と同様、平常時は誰でも利用できる。
敷地造成工事では、公園南側、西側の市道も拡幅。よりスムーズに車両が通行できるよう利便性を確保する。
同町山馬越地内にある現在の県立大船渡病院は、平成7年から現地での診療を開始。その後、旧病院施設は解体され、18年には北側敷地に葬祭施設が建設された。
残る約7000平方㍍の跡地は市有地となり、消防署などが入る防災センターの建設候補地に挙がったが、消防車両が通行する道路整備の難しさなどから選ばれなかった。昭和35年のチリ地震津波では、近隣地域に暮らす住民の多くが犠牲となり、市では避難場所や防災啓発活動の拠点としての活用を検討してきた。
平成22年度に防災公園としての設計をまとめ、23年度整備を予定していたが、同年3月11日の震災を受け、休止に追い込まれた。
一方、上下水道のライフラインが行き届き、土砂災害危険区域外にあることから、発災2週間後の3月25日から応急仮設住宅整備に着手。72戸分を確保し、4月20日に完成した。
高齢者世帯や障害者、要介護者、乳幼児のいる世帯などを優先的に入居。30年度まで利用が続き、令和元年10月に撤去された。
現在も、有事に応急仮設住宅として活用できる貴重な土地であることには変わらず、最大クラスの津波襲来を想定したハザードマップでも、浸水想定域から外れている。市では、震災前にまとめた設計を踏襲し、地域住民からは、車両による避難が多い実情を上げる声が寄せられていた中、震災前の設計よりも駐車可能台数を増やした。
市土地利用課の伊藤喜久雄土地利用課長は「災害時の活用と、レクリエーション機能を併せ持つ施設として、早く整備していきたい。市がすぐに活用できる平場の土地は少なく、公園整備後も迅速に仮設住宅などを整備できる」と話している。