「意見交換で事業理解を」 吉浜地区の太陽光発電計画 環境アセス方法書に知事意見
令和5年12月2日付 1面

大船渡市三陸町吉浜の大窪山市有地を中心とした大規模な太陽光発電事業の環境影響評価(環境アセスメント)方法書に対し、11月30日付で県知事意見が出された。水質保全や土地の安定性、動植物などに対する適切な調査に加え、地域住民との適切なコミュニケーションを図る観点から、意見交換を行いながら事業への理解を得られるよう求めている。
知事意見は、同事業を計画している岩手三陸太陽光発電合同会社に対するもの。同社は、自然電力㈱(本社・福岡県福岡市、磯野謙、川戸健司、長谷川雅也代表取締役)が代表社員となっている。
意見のうち、総括的事項では「地域住民との適切なコミュニケーションを図る観点から、環境影響の調査や予測、評価にあたっては、地域住民、有識者、対象事業実施区域の大部分を占める五葉山県立自然公園の管理者、関係行政機関等との意見交換を行い、必要に応じて追加的な調査、予測、評価の実施や環境保全措置の検討を行い、事業について理解を得られるよう努めること」との内容が盛り込まれた。
自然環境各分野の適切な調査や予測、評価だけでなく、地域住民らとの意見交換の重要性にも踏み込んでいるのが特徴の一つ。これまでの説明会では反対・不安の観点から意見を示す発言が多かった中、より丁寧な説明・対話の場を求める内容となっている。
個別的事項のうち、水質に関しては近年の局所集中的な降雨の傾向と工事に関する雨水排水対策を踏まえた適切な調査地点設定に言及。土地の安定性では、実施区域内に含まれる花こう岩質岩石に「まさ土」が散見される中、十分な地質調査の必要性に触れた。
希少猛禽類では、生息地の利用状況変化や植生変化などの影響を踏まえた調査を求め、環境省レッドリストやいわてレッドデータブックに掲載されている希少な動植物への配慮も求めている。
景観については、大船渡市長の意見を踏まえて「五葉山山頂に至る登山道などを眺望点として追加を」と記載。人と自然との触れ合いに関する調査地点として、周囲に位置する元山、大窪渓谷、笠詰山、大窪山についても検討を求めている。
環境アセスメントは、大規模な開発事業などを行う場合、周辺環境の影響を事業者自らが調査・予測・評価を行い、その結果を公表し、県民や知事、市町村長などの意見を聞きながら環境への影響をできるだけ少なくするための手続き。自然電力は県条例に基づき手続きを進めてきた。
吉浜地区の市有地を中心に計画する「大船渡第一・第二太陽光発電所事業」は、元山と呼ばれる大窪山牧場跡地など約96㌶が対象。太陽光パネルをはじめ工作物の設置面積は約23㌶としている。
自然電力では環境アセスメントの方法書をまとめ、9月に市内で住民説明会を開催。10月末に盛岡市内で開かれた県環境影響評価技術審査会では有識者らが事業者側と議論を交わし、住民理解や計画地内の湿地を避けた道路整備、土地の安全性調査の範囲拡大に加え、イヌワシへの影響に関する指摘などが寄せられていた。
自然電力では、1年程度をかけて準備書の作成を進める。その間も、説明会や専門家の審査を受ける方針。「ご指摘のあった内容を踏まえ、今後の調査や評価を丁寧に進めていきたい」としている。
土地所有者の市は、自然電力が実施する環境アセスを含めた法令に基づく手続きの流れを見ながら、住民理解の進捗なども踏まえ、事業可否の総合的判断を固める姿勢を示している。