空の旅彩る自慢の一品 及川農園(世田米)の梅酒 全日空国際線機内食に採用 酔仙酒造と共同開発
令和5年12月3日付 7面

梅酒製造・販売を手がける住田町世田米の㈱及川農園(及川詔夫社長)が陸前高田市の酔仙酒造㈱(金野連社長)とともに開発した梅酒が、1日から全日本空輸㈱(ANA)の国際線ファーストクラス機内食に採用されている。およそ8年かけて完成した自慢の一品が、国内外からの搭乗客の空旅を彩っている。(清水辰彦)

1日からANA国際線ファーストクラスで採用されている梅酒
昭和24年から梅の栽培を行っている及川農園。無添加で手作りする昔ながらの梅干しは、平成27年3月からANA国際線ファーストクラス機内食に採用され、現在も提供されている。
同年秋、及川社長は「梅酒もファーストクラスに」という目標を立てて開発に着手したが、道のりは長かった。
さまざまなメーカーと試行錯誤を繰り返したが満足いくものができず、令和元年からは酔仙酒造とタッグを組み完成を目指した。
平成27年からの約8年間で作った試作品は120種類を超える。毎年、ANA側にも試飲してもらい、一昨年あたりから味の向上に手応えを得た。昨年秋ごろ、ようやく納得いくものが出来上がり、高島屋や京王百貨店、盛岡市のフェザン内にある用品店「5858」などでも販売を開始した。
ウメの実は国内に約300種類あるとされ、梅干しと梅酒には違った品種が用いられる。
及川農園では梅酒に適した原料を最高の状態に熟した時に収穫し、すぐさま酔仙酒造へ持ち込む。ベースとなる酒には、酔仙酒造の看板商品「雪っこ」を2度蒸留し、アルコール度数を43度まで上げたものを使用している。
〝梅のプロ〟と〝酒のプロ〟がタッグを組んで開発した自慢の品について、金野社長は「一つ一つの工程に手間と時間をかけ、お互いに納得いくものができた」と自信を見せる。試飲を行ってきた㈱ANAケータリングサービスの篠原博士羽田工場長兼調達部長も「最高のクオリティー」と太鼓判を押す。
1日には、関係者を招いての記念講演会や懇親会が世田米のホテルグリーンベル高勘で開かれ、国際線ファーストクラスでの採用を祝った。
ANAケータリングサービスをはじめ、及川農園と取引のある首都圏の企業や百貨店、県内事業所、酔仙酒造、県、町、商工会などから合わせて約50人が出席。
ANAケータリングサービス商品管理部の上村典子衛生担当課長、篠原調達部長、森誠剛和食統括部長の講演に続いて懇親会が行われ、出席者には梅酒も振る舞われた。
及川社長は「香りで引きつけ、味で納得してもらえる品になった。上空1万㍍の『天空のレストラン』でぜひ味わってほしい」と、採用に喜びをみせた。