8月の椿島表面海水温 最高28・4度 昨年比6・6度高めに 市議会で当局示す 貝類養殖「へい死相次ぐ」

▲ 8月の海水温が高いところで昨年よりも6.6度上がったことが分かった=陸前高田

 陸前高田市は5日の市議会定例会で、8月30日に県が調査した同市の椿島沖合の表面海水温が最高で28・4度を記録し、昨年対比で6・6度上昇したことが分かったと報告した。地球温暖化に伴う海洋環境の変化は、全国的に水産資源や漁業・養殖業に影響を与えているとされ、同市の貝類養殖の現場では「へい死が相次いでいる」との声が上がっている。市は全容の把握と原因究明に努め、「必要な対策を考えたい」としている。
 海洋環境の変化は、同日行われた市議会定例会の一般質問で、伊勢純議員(日本共産党)が取り上げた。「全国的に海水温が上昇している。貝類の成育、イシカゲ貝の稚貝採取、魚類の出荷に影響が出ており、現状と対策はどうか」とただした。
 佐々木拓市長は、県水産技術センターが8月30日に実施した海洋観察の結果を示し、昨年よりも海水温が上昇している現状を説明。「カキ、ホタテなどの貝類養殖では成育自体に著しい不全はなかったものの、特に広田湾の内奥部に位置する小友町や米崎町沿岸の漁場でへい死が相次いでいるとの報告が広田湾漁協から寄せられている」と述べた。
 同漁協によると、同市の特産「広田湾産イシカゲ貝」の今季出荷量は前年比25・4㌧減の58・6㌧で、計画の77%にとどまった。貝のへい死の大量発生が原因といい、過去最多の水揚げ実績となった昨年度から減産した。
 イシカゲ貝は市内漁場で採取した天然の稚貝を2年半ほどかけて育てて出荷するサイクルのため、稚貝の確保状況が数年後の水揚げに直結する。市長は「例年12月末に確認作業を行っているため全容の把握はできていないものの、一部漁業者からは例年に比べて明らかに少ないとの声が聞かれている」と説明した。
 漁船漁業に関しては、暖水系の魚類の漁獲量が多くなっているという。こうした状況を踏まえ、市長は「今年はかつてないほどの高水温が太平洋沿岸の水揚げ状況に著しい変化をもたらしている。現時点では詳細は明らかになっていないが、今後、県や国などと連携しながら、できるだけ早期に被害状況の把握と原因究明に努める。その結果を踏まえ、必要な対策を考えていきたい」と述べた。(高橋信、2面に一般質問の主なやり取り)