困難乗り越える変化を アイリスオーヤマ会長・大山氏講演会

▲ さらなる復興に向けたエールを込めながら講演する大山氏

市内外から訪れた人々が熱心に聴講

 生活用品大手・アイリスオーヤマ㈱(宮城県仙台市)の大山健太郎代表取締役会長(78)を招いた講演会が9日、大船渡市盛町のリアスホールで開かれた。大山氏は、さまざまな決断と熱意で苦難を乗り越えてきた自らの足跡を振り返りながら、ニーズに合わせた変化や、地域・業界でナンバーワンを目指すことの大切さなどを伝えた。
 講演会は、平成25~28年度に経営者や東日本大震災からの地域復興を担う人材を育成してきた「未来創造塾」で学んだ気仙卒塾生(代表・志田豊繁㈱海楽荘社長)が主催。
 塾長を大山氏が務め、現在も塾生らと顔を合わせる機会を設けている中、より多くの人々が学び、地域全体の産業振興や活性化への機運を高めていこうと、初めて企画した。
 市内外から約500人が来場。冒頭、志田代表が「三陸でピンチを乗り越えるにはどうすればいいかを考えていただきたい」と述べたほか、渕上清市長と大船渡商工会議所の米谷春夫会頭が、それぞれ講演を契機とした地域発展に期待を込めてあいさつした。
 大山氏は「アイリスオーヤマに学ぶピンチはチャンスの哲学」と題して講演。高校卒業後、父親の急逝で下請け工場だった大山ブロー工業所の代表に就任し、割れやすいガラス製に置き換わるプラスチック製の「浮き」を開発した経緯などを振り返った。
 養殖漁業の業界で瞬く間に普及する商品となった成長に加え、オイルショックなどで危機に直面した苦労も言及。さらに、園芸、ペット、収納などと分野を変えながら会社を成長させた経営戦略を明かした。
 利益を出し続ける企業経営に関して「製造業だけでなく水産業や農業もそうだが、結局は需給バランスが大事。競争社会を抜け出すには、自ら需要をつくるしかない。『こんなものがあったらいいな』というニーズに合わせた商品づくりに軸足を変えた」「いいものは長くは続かない。社会のニーズに合わせて、いかに変化に対応するか」などと語りかけた。
 震災を機に発足した未来創造塾への思いにも触れ、まちを活性化させるために奮闘する経営者の未来にも期待を込めた。「最初に家族を養うために創業し、社員とともに豊かな生活をするために大きくするのが第2ステップ。次はビジョンを掲げ、地域や業種でナンバーワンを目指す気持ちを持って。さらに、誰のために何をやるかを考えて」などとエールを送った。
 生活用品から家電用品、LED照明、節電機器まで31社、8000億円を超える企業グループの代表とあって、具体的な商品の誕生に至った秘話も散りばめられ、出席者は終始熱心な表情で聴講。聴講者から質問を受け付けたほか、卒塾生の活動を紹介する展示も行われた。