空き地の雑草 深刻な課題に 区画整理のかさ上げ地 民有地の対策に市は苦慮

▲ 高田地区の未利用地に生い茂る雑草。交通安全や防犯、景観上の観点からも対策が求められる

 東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市が土地区画整理事業で整備した高田、今泉両地区の未利用地で、伸び放題となっている雑草への対処が深刻な課題となっている。交通の障害となっているほか、周辺の環境悪化や犯罪の温床になりかねないとして、地元からは改善を求める声が相次ぐ。しかし、民有地が大半を占めるため、市も抜本的な対策を打ち出せず、頭を抱える。震災発生からあす11日で12年9カ月。未利用地の解消は一朝一夕で進まないが、現地の雑草は日を追うごとに繁茂する。今後も向き合わねばならない問題だ。(高橋 信)

 

あす震災12年9カ月

 

 「切迫した問題だ」。
 11月29日に市役所で行われた定例記者会見。佐々木拓市長が同月、市内全11地区で開催された市政懇談会を振り返った際、懇談会の中で市民から指摘された「雑草問題」について、そう厳しい認識を示した。「空き地の雑草がかなり生え、市民生活に支障が出ている。すぐに解決するのは難しいが、抜本的な対策を検討したい」と強調した。
 合計約300㌶で展開された高田、今泉両地区の土地区画整理事業。市によると、かさ上げした民有地は高田地区35・3㌶、今泉地区18・8㌶で、うち利用されているのは9月末現在、高田12・9㌶(利用率36・5%)、今泉3・9㌶(同20・7%)にとどまる。手つかずの土地には雑草が生い茂っている。
 高田地区での市政懇談会では、参加者がこの問題を取り上げ、「草木が伸び放題で、歩行者の通行に大変危険な状態。児童の身長を超えており、防犯上の点でも危惧される。きちんと整備管理してもらうよう具体的な対策を実施してほしい」と、語気を強めた。
 また、高齢化を背景に、管理が行き届いていない空き地は津波浸水地以外の市内全域に広がっており、除草は各地共通の課題だ。
 市政懇談会開催地の11地区のうち、市への要望事項として草刈りを取り上げたのは少なくとも9地区。懇談会では「通行に支障となる木の枝が路上に出ているので適切な管理をお願いしたい」(二又地区)、「草刈りを担う地元の道路愛護会の高齢化が進む。これからの除草をどうするか考えてほしい」(小友地区)など、切実な声が聞かれた。
 市も手は打ってきた。土地所有者に適切な管理をするよう連絡しても反応が鈍いため、昨年度、外部委託し、高田地区のかさ上げ地の一部で草刈りを実施した。しかし、刈れるのは道路にはみ出し、通行上の支障となる部分のみ。根元から刈り取るには至らず、応急措置にとどまった。
 本年度からは深刻さを伝えようと、土地所有者への送付文書に現地の写真も添えるようにした。対応に乗り出す所有者が予想以上に増えたものの、依然として放置された土地は目立つ。
 慎重にならざるを得ない事情もある。市土地活用推進課の髙橋宏紀課長は「お金と労力をかけて草刈りを定期的に行い、管理している人もいる。放置された空き地への対策に踏み切ることで、不公平感が生まれることは避けねばならない」と打ち明ける。
 解決に直結するのは土地利活用の進展だが、容易なことではない。市は土地区画整理事業用地の所有者と利用希望者を結ぶ「土地利活用促進バンク」を運用し、成約奨励金も用意して熱心にPRする。ただ、成約数は高田地区42件、今泉地区10件で、登録数に対する割合は高田12・4%、今泉4・5%と低調だ。
 今回の市政懇談会で、改めて深刻さが浮き彫りとなった「雑草問題」。市建設部の菅野誠部長は「民有地である事情などが絡み合い、非常に難しいが、手をこまねいているわけではなく、庁内でも『何ができるか』と検討を重ねている。市民の安全・安心が第一であり、できうる対策を講じていきたい」と見据える。