風土生かしたツアー商品化へ ワイナリー「ドメーヌ ミカヅキ」 ファムトリップで意見募る

▲ ファムトリップ参加者と交流する及川代表(右端)

 陸前高田市のワイナリー「Domaine Mikazuki(ドメーヌ ミカヅキ)」(及川恭平代表)は、同市の風土や産業、人をつなぐワインツーリズムを企画し、来年からの本格実施を目指している。11、12の両日は、観光やメディア関係者ら対象のファムトリップ(モニターツアー)を市内で実施し、海を望めるブドウ畑の散策や、ワインと地元魚介を使ったすしの組み合わせを体験する会などを展開して意見を参考にした。及川代表(30)がまちの持続可能性をテーマに練ってきた「ワインを通じて陸前高田に人のにぎわいを生む仕組み」として、注目を集める。(阿部仁志)

 

ガストロノミーでワインとすしのペアリングを楽しむ参加者ら

 ファムトリップは、観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の採択を受け実施。11月に第1回を行い、2回目の今回は市内や東京などからの11人が参加した。
 初日は、小友町の箱根山を出発し、ドメーヌ ミカヅキが管理する米崎町内のブドウ畑を訪れたあと、脇之沢漁港から船に乗って広田湾内のカキ養殖いかだを見学。夜には高田町のすし店「旬味旬彩 鮨まつ田」(松田光代店主)で、「ガストロノミー」と銘打ったすしとワインのペアリングを体験する場が設けられた。
 ガストロノミーでは、盛岡市でワインショップ&バー「アッカトーネ539」を経営するソムリエ・松田宰さんが進行役を担当。三陸の漁場でとれた新鮮な魚介を使った10種類のすしと、各種ワインの組み合わせを順に説明した。
 ペアリングは、食材とワインのそれぞれが持つ酸味や塩味、うま味成分などを分析し、素材のポテンシャルを引き出せるよう計算。調味料にワインを混ぜてすしを味わうなど斬新な食べ方も紹介され、参加者らは「目からうろこ」「組み合わせ方でこんなに味が変わるとは」と何度も驚きの声を上げた。
 12日は、箱根山の施設で松田さんが同市の地質と食との関係性などについて解説。同市が日本最古の地層に属し、ミネラル豊富な水や海の幸に恵まれていること、及川代表が同市の土壌に合ったブドウ品種・アルバリーニョの栽培を進めている意義などを示した。
 参加したカメラマン・大畑陽子さん(40)=埼玉県=は「いろいろな角度から陸前高田のことを知ることができ、想像していた以上に楽しかった。地元産業のこれからを考える及川さんという若い人材も、陸前高田の宝だと感じた」と期待をかけていた。
 小友町出身の及川代表は、高校時代に震災を経験し、地元のまちづくりに関わることを決意。陸前高田の風土とワインとの親和性を見いだし、関東のワイン専門商社やフランスのワイナリーで修業したあと、令和2年にUターンしてドメーヌ ミカヅキを起業した。
 人口減少や少子高齢化が喫緊の課題となっている同市において、交流人口の拡大を図り地元産業の盛り上げにつなげようと、「陸前高田でしかできない体験」をパッケージ化した滞在型ワインツーリズムを構想。ワイン用品種の栽培や商品開発などと並行してプランを練り、今回のファムトリップ実施にこぎつけた。
 今後は、ファムトリップ参加者からのアンケート結果をもとにプラン案の磨き上げを図る。旅行会社などと提携しての商品化を目指し、来年夏頃までに、10~15人規模を受け入れる体制を整える。
 及川代表は「ファムトリップは、前回も含めて参加者からとても良い感触を得られたという実感があり、手応えを感じている。陸前高田の気候や土壌、さまざまな分野のプロフェッショナルを線で結び、誰にもまねできない商品を実現させたい」と意気込む。