「鉄路復活の考えはない」 市議会一般質問で市長答弁 BRTによる利便性向上言及
令和5年12月16日付 1面

大船渡市の渕上清市長は、15日の市議会一般質問で、気仙沼駅・陸前矢作駅―盛駅の区間でBRT運行となっているJR大船渡線について「鉄路復活の考えはない」との姿勢を示した。東日本大震災後のBRT化による運行便数や駅数の増加など、利便性向上にも言及。上下分離方式経営の在来線活用について、当局は難色を示した。
大船渡線を取り上げたのは、山本和義議員(日本共産党大船渡市議団)。全路線維持を強調しながら「市長は市議時代に鉄路復活を望む言動もあり、地方自治体の財政負担がなく、財源を持っているJR東日本と国の責任を明確にし、鉄路復活に向けて働きかけるなど市民の期待に応える政治的行動をとるつもりはないか」とただした。
震災で甚大な被害を受けたJR大船渡線は、平成25年度の仮復旧時から、気仙両市などでBRTによる運行が続く。復興調整会議や沿線自治体首長会議のほかに「今後のあり方を考える懇談会」で検討・協議を重ね、市議会からの提言も得ながら、平成27年12月にBRTによる本復旧の受け入れを決めた。
現状認識として渕上市長は「鉄道と比較して速達性は劣るが、大船渡市から気仙沼市までの運行便数が19本から25本に増え、大船渡市内の駅数も4駅から9駅に拡大し、利用者の利便性は大きく向上している」との認識を示した。
そのうえで「市としては、令和元年11月にJR東日本から国に対して鉄道事業の廃止届が提出され、現在もJR東日本と協議を行いながら、BRTのさらなる利便性向上に努めている。鉄路復活に向けた考えは持ち合わせていない」と語った。
同議員は二酸化炭素排出量削減にも優位性がある鉄道の意義を強調。維持・活性化に向けて「未来に引き継ぐためには、整備新幹線で既に導入されている、国の機構が建設・保有し、JRが運行するという上下分離方式の経営を在来線にも活用をすべき」と提言した。
今野勝則商工港湾部長は、同方式では地方自治体による一定割合の負担に加え、昨年7月にJR東日本が地方路線の収支を公表して多くの路線が赤字であることが明らかになり、国もローカル鉄道のあり方に関して路線の存続や廃止、バスへの転換など、鉄道会社や自治体などが検討する協議の枠組みなどについて提言している動きに言及。「県内でも大船渡線を含む6路線で議論が進んでいる。このような状況から、上下分離方式の経営をすべての在来線への導入するのは、極めて困難と認識している」と述べた。(2面に一般質問の主なやり取り)