県の復興事業 年度内完了へ 震災発生から13年で 気仙 残る普金地区(赤崎町)で整備進む(動画あり)
令和5年12月16日付 1面

県は15日、東日本大震災からの復興事業として大船渡市赤崎町で整備を進める普金地区の海岸保全施設に設けた陸こう3基で、自動閉鎖システムの運用を開始した。同地区は県が気仙で復興事業として取り組んできたハード整備の最後となり、すでに防潮堤機能は完成。現在は歩道などの整備を行っており、年度内には全工事が完了する見通し。気仙の復興事業は震災発生から13年でゴールを迎えることとなる。(三浦佳恵)

14日夜には陸こう自動閉鎖システムの最終試験を実施
普金地区の海岸保全施設は、市道野々田川口橋線から県道大船渡綾里三陸線の綾里方面にかけて整備。総延長は586㍍。
主な施設は、延長440㍍、高さT・P(東京湾平均海面)7・5㍍の防潮堤、カウンターゲートタイプの水門1基(高さ4・2㍍、幅4・8㍍)、自動閉鎖システムを備えた陸こう3基(幅10~22㍍、高さ3・6~5・84㍍、全て横引きゲート)、乗り越し道路1カ所。
工事は平成27年度に始まり、当初は28年度の完成を目指していたが、地元との調整や地盤、資材調達などの関係で5度の事業延長を余儀なくされた。
本年度は予定していた工事がスムーズに進み、6月に陸こうの扉体3基を設置。8月には防潮堤の躯体が全て完成し、津波防護機能を発揮できる状態となった。
その後は、陸こう自動閉鎖システム用の電気設備工事や県道・市道の切り替え工事などを実施。電気設備工事が終わり、今月14日夜には同システムの運用開始を前にした最終試験を行った。
同システムは、津波注意報・警報が発令されると遠隔操作でゲートが閉まるもの。試験では、工事担当者や県大船渡土木センターの職員らが設定時間に合わせて陸こう3基の扉を開閉し、不備がないかを確認した。15日午前10時には、システムの運用が開始された。
普金地区の整備は道路工事などが残っているが、来年3月末までには完了する見通し。
県は令和4年度まで、被災した防潮堤や道路など社会資本の復旧・復興状況を「社会資本の復旧・復興ロードマップ」として定期的に公表。これによると、気仙では今年3月末時点で国、市町による事業は完了済み。県主体は90事業(大船渡市52事業、陸前高田市33事業、住田町5事業)あり、このうち、唯一同地区が本年度に延長されていた。
同地区の施設が完成すれば、国、県、3市町で行われてきたハードの復興事業は完了となる。
同センターの吉田健一副所長兼復興まちづくり課長は「普金地区は非常に現場が狭く、地質が複雑でもあり、完成までに9年かかることとなった。地域や関係者の皆さまの協力で、年度内に完成するめどがついた。完成後はしっかりと施設を管理していきたい」と話している。
県の水門・陸こう自動閉鎖システムは、22日(金)に最後となる三陸町綾里の綾里漁港海岸(港地区)で運用を開始する予定。