遊・YOU・亭夏虫の運営終了へ 三陸町越喜来の鹿の森公園施設見直し 「お湯っこ」は継続、サウナ改修も

▲ 本年度で運営終了の方針が示された遊・YOU・亭夏虫

 大船渡市は22日の市議会全員協議会で、三陸町越喜来の市鹿の森公園内にある森林総合利用施設「遊・YOU・亭夏虫」の運営を、本年度で終了する方針を示した。新型コロナウイルスの影響や宿泊需要の減少、事業収支確保の難しさなどを受けて昨年2月から休業しているが、今後も安定運営は難しいと判断。公園内の「夏虫のお湯っこ」は引き続き運営するとともに、利用者から好評のサウナ施設は、壁板や床板などの改修を実施するほか、料金改定も行っていく。
 園内の遊・YOU・亭夏虫や緑と鹿のふれあい広場、ふるさとふれあい公園は、平成4年に供用開始。夏虫のお湯っこは同8年から始まった。
 20年から、管理運営には指定管理者制度を導入。管理を担う三陸ふるさと振興では28年度から3期連続で経常収支が赤字となり、損失額が拡大。損失額拡大を受け、経営健全化方針を策定し、令和4年度までの経常収支黒字化を目標に掲げて取り組みを進めるが、コロナ禍で目標の実現には至っていない。
 さらに、施設老朽化が進み、設備更新などが必要な時期を迎えることから、今後も厳しい状況が予想される。来年3月で指定管理期間が満了を迎える中、市は施設運営の見直しを進めてきた。
 遊・YOU・亭夏虫は総合案内・休養施設やバンガロー4棟、コテージ3棟などで構成。利用者は復興需要の収束や新型ウイルスの影響を受け、平成30年度の2085人から令和3年度は1067人まで減少した。
 昨年2月からは、新型ウイルス岩手県緊急事態宣言に伴う4カ月間の休業に始まり、宣言解除後も、利用者の十分な確保や事業収支を回復するための見通しが立たず、休業が続く。
 施設運営費は2000万円前後で推移。前年度も、一般管理費では光熱費やリース料などの負担で、経常利益は336万円の赤字となった。
 近年は、震災で被災した宿泊施設の再建や新規事業者の進出など、市内の宿泊施設の収容人員が増加。
 さらに、施設の運営再開に向けては、正面入り口ポーチの柱の腐食やひび割れ、施設外壁の一部欠損、宿泊棟内の雨漏り拡大などで改修に迫られ、約1000万円の費用が見込まれる。
 こうした状況を受け、本年度で運営を終了。施設は、解体を基本に検討するが、解体費も2700万円超が見込まれ、売却も視野に入れる。
 一方、夏虫のお湯っこは、市民の休養・健康増進や地元雇用による地域の経済活動に一定の役割を果たすことから、運営は継続。ただし、5年間の指定管理期間内を通じて、事業収支の検証を進める。
 利用者は減少傾向にある一方、依然として年間4万人を超え、特にサウナ施設は好評を博している。一般管理費は平成30年度で1505万円だったのが、令和4年度は原油価格や物価高騰などの影響で2223万円に。営業利益は2718万円の赤字で、指定管理料1000万円などによる営業外収益を入れても、経常利益は1368万円の赤字となっている。
 サウナ施設に関しては、森林環境譲与税を活用し、室内の壁板・床板などの改修を実施することで、利用者の増加を図る。事業収支の改善を図るため、入浴事業以外の食堂や売店業務については、指定管理者の自主事業とする方向で進める。
 利用料収入は、サウナ施設のリニューアルに合わせて料金を改定し、現行の大人一人500円を600円とする。それでも営業利益黒字化は厳しく、市からの指定管理料は6年度から2000万円に増額する案を示した。
 施設管理を担う三陸ふるさと振興は市が出資する第三セクターで、道の駅さんりく・三陸ふるさと物産センターも運営。令和元年度以降、物産センター分は経常利益を確保している。
 質疑では、お湯っこの運営にも厳しい見方を示す議員が「物産センターの運営に集中すべきでは」と指摘も。指定管理料支出が倍増となる中、5年間の指定管理期間を3年に短縮するよう求める意見が出たほか、さらなる経営努力や利用者増に向けた情報発信・活性化策も話題に上った。