「明るい年に」願い込め 気仙各地で迎春準備進む(別写真あり)
令和5年12月31日付 7面

今年も残すところきょう限り。気仙3市町の神社仏閣では初詣の参拝客を迎える作業が行われ、飲食店や仕出し店ではおせち料理の仕込みが大詰めを迎え、正月用品を求める買い物客でにぎわう「市」も。影響が長引く新型コロナウイルス感染症の行動制限が緩み、活気を取り戻す糸口が見えた今年。一方で、海外の軍事衝突やこれも背景とした物価高騰など先の見えない情勢もあり、各地の迎春準備は「明るい年に」の願いを込めながら進んだ。
初 詣
大船渡市盛町の天照御祖神社(長谷川瑞彦宮司)では30日、総代などの神社関係者5人が集まり、初詣に訪れる住民らを迎え入れるための準備作業にあたった。
天神山の高台に鎮座し、天照大御神を祭る同神社。開運や厄よけなどのほか、境内社の天神天満宮は学業守護の御利益もあるとされていることから、初詣には毎年多くの住民や受験を控える中高生らも足を運ぶ。
今年は20日頃からこつこつと作業を始め、お札やお守り、破魔矢などの縁起物の準備に加え、境内、参道の清掃などを行ってきた。30日は、総代3人が集まり、長谷川宮司(68)らとともにのぼり旗を掲揚したり、鳥居にサカキをくくりつける作業を行い、参拝客を迎え入れる体制を万全にした。
長谷川宮司は「今年はコロナも落ち着いたが、軍事戦争や夏の暑さなど、不安も多い一年となった」と振り返り、「来年の干支は『辰』で、『甲辰』の年。良いものをもたらす瑞獣とも呼ばれる縁起の良い辰にあやかり、令和6年が上昇気流に乗っていい一年になることを願っている」と話していた。

「おいしく味わってほしい」。丁寧に盛り付ける調理スタッフ
おせち料理
大船渡市大船渡町の飲食店「活魚すごう」は30日、正月に欠かせないおせち作りのピークを迎えた。重箱には豪華な品々が詰め込まれ、担当者は「おいしく味わってほしい」と願いを込めた。
仕込みや調理は、28日から本格化。調理人4人を中心に、スタッフ約10人体制で作業に追われた。
煮物、焼き料理、蒸し料理など、厳選した食材を材料に調理する品数は80を超える。既製品を極力使用しない手作りがモットーで、味付けもこだわっている。
人気は特選の三段重で、約40品を楽しめる。年越しを祝う豪華な折詰弁当も用意している。おせちなどは盛岡市の百貨店に卸しているほか、新たに市ふるさと納税の返礼品としても取り扱っており、地元内外に届けられる。
熊谷瞳美店長(38)は「おせちは特別なもの。各家庭でおいしく味わっていただきながら団らんの時間を過ごせるよう、一品一品丁寧に仕上げたい」と汗をぬぐった。
詰 市
陸前高田市竹駒町字相川地内で開かれている「けせん朝市」で30日、「詰市」が行われた。常連客らが早朝から訪れて正月用の食材や花を買い求め、出店者との和やかな交流も楽しんだ。
けせん朝市は、東日本大震災前に高田町で開かれていた「市日」の出店者らが中心となり、竹駒町の仮設店舗(旧伊東文具店)跡地で毎週日曜日に開いている。大みそか前には詰市として開くのが恒例となっている。
この日は魚介、乾物、花の3店舗が出店。開店の午前8時前から客が並び、タコやホタテ、ナマコといった新鮮な海産物のほか、升売りの乾物、色鮮やかな花々などを買い求めた。
朝市恒例となっている炭火焼きイカの振る舞いもあり、味わった人たちは満面の笑顔。出店者らと「あっという間の一年だった」「今年もお世話になりました」などと言葉を交わし、互いに明るい新年を願った。
海産物販売業・川端商店の熊谷嘉一さん(87)は「おかげさまで今年も商いを続けられ、年末にこうして皆さんと顔を合わせることもできた。来年も元気な毎日を過ごしたい」と話していた。
けせん朝市は、31日は休み、1月7日(日)から通常開催する。

詰市で食材を買い求める来場客