利用促進の方向性確認 第1回JR大船渡線沿線自治体首長会議 路線維持へ地元底上げ、観光需要拡大など重視 一関市で
令和6年1月10日付 1面

第1回JR大船渡線沿線自治体首長会議は9日、一関市役所で開かれた。気仙両市に加え、一関市、宮城県気仙沼市の4首長がそろって出席。大船渡線を巡っては、一昨年にJR東日本が利用が少ない路線として経営情報を公表し、現行での存続に不安も広がる中、この日は路線維持に向けて地元利用の底上げや観光需要の拡大といった利用促進策の方向性を確認した。次回会議は6月をめどに調整する。(佐藤 壮)
会議は、渕上清大船渡市長と佐々木拓陸前高田市長、佐藤善仁一関市長、菅原茂気仙沼市長に加え、本県のふるさと振興部長、県南広域振興局長、沿岸広域振興局長、宮城県の企画部長、気仙沼地方振興事務所長で構成。この日は代理を含めた9人全員に加え、沿線各市や両県の関係者らが出席した。
冒頭、座長を務める佐藤一関市長は「大船渡線は産業、観光、文化、教育などに欠かせない地域経済を支える重要な社会基盤と認識している。一ノ関駅では東北新幹線や東北本線、気仙沼駅では気仙沼線BRT、盛駅では三陸鉄道リアス線をつなぐ公共交通ネットワークを形成するための重要な路線」とあいさつ。
大船渡線などの経営情報公表を受け、令和4年11月に開かれた県主催のJRローカル線維持確保連絡会議で、各路線の課題把握、鉄道存続に向けた利用促進策を検討すべく、路線ごとの沿線自治体首長会議の設置を確認したことにも言及。「維持に向け、国やJR東日本への要望、沿線住民の意識醸成や利用促進等を含めた対応策を協議、検討するためにこの会議を設置するに至った。さまざまな角度から議論を」と述べた。
その後の協議は非公開で行われた。終了後に沿線各首長が取材に応じた。
説明によると、会議では利用促進策の方向性を確認。日常利用の促進では、沿線住民のマイレール意識醸成を図り、地元利用の底上げにつなげる。観光需要の拡大では、公共交通の利便性向上など、観光地へのアクセス改善に向けた取り組みを推進。公共交通ネットワークの維持を通じた地域活性化を見据える。
渕上大船渡市長は「大船渡線の維持ということ。より連携し、観光を軸とした交流人口拡大について、連携して進めたい」と語った。会議では日常利用の促進に関し、人口減少が進む中、誘客の柱として現行の鉄路維持に触れたほか、さらに「全線においては一気通貫した形での維持」も強調したという。
菅原気仙沼市長は「インバウンドで鉄路の力が発揮されている。JRには、地方に配慮して頑張って運転していただいている思いがある。感謝を伝えるとともに、次の会議にでも説明は受けたい考えを意見した。JRには利用促進に向け、観光も含めて力を借りていくべきでは」と述べた。
佐々木陸前高田市長は「大船渡線は、鉄路とBRTからなる特性を持っている。そういった特性も考慮し、利用促進や利便性を高める議論をしてほしいということを話した。観光客に来ていただくには、鉄路とBRTが一体となって利便性を高めないと、路線全体の活性化にはならない」と話した。
今後の意気込みを問われた佐藤一関市長は「日常利用をどのようにしていくかが大きい。鉄路とBRT区間では担う役割も違う。沿線の首長からさまざまな意見を聞き、練り上げていきたい。大船渡線は内陸と沿岸を結ぶ重要な路線で、まだ震災復興の途中にある。大船渡線の意義を高めていくことが使命」と答えた。
昨年11月、JR東日本は「地域の方々に現状をご理解いただくとともに、持続可能な交通体系について建設的な議論をさせていただくため」として、利用の少ない34路線62区間の令和4年度収支状況を公表。
大船渡線の鉄道区間(一ノ関─気仙沼、62・0㌔)は、運輸収入が1億1800万円だったのに対し、営業費用は15億4500万円で、差し引き14億2700万円の赤字に。100円の運輸収入を稼ぐためにかかった費用を示す営業係数は1308円で、収支率は7・6%と、厳しい状況が浮き彫りになり、路線維持に向けた活動強化の機運が高まっている。