怠け戒め 幸を各地に 奇習「吉浜のスネカ」 伝統つなぎ継続誓う(別写真あり)
令和6年1月16日付 1面

伝統つなぎ継続誓う
大船渡市三陸町吉浜地区に伝わる小正月の奇習「吉浜のスネカ」は15日、同地区で行われた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録後は5度目で、昨年に続き地区全域を回った。幼い子どもがいる家では「泣ぐわらしはいねぇが」などと迫り、伝統をつなぎながら、地区内の安寧や繁栄を願った。 (佐藤 壮)
吉浜スネカ保存会(岡﨑久弥会長)の関係者や吉浜在住の中学生ら計10人が、流木を生かした面やわらみの、俵などを身につけ、アワビの殻を腰にぶら下げた。約360世帯を回り、威圧感ある声で「かばねやみはいねぇが」などと迫った。
このうち、渡邉一彦さん(64)宅では、スネカが鼻を鳴らしながら居間に登場。孫の佐々木香里奈さん(末崎小1年)、咲奈ちゃん(3)、里茉ちゃん(7カ月)の姉妹は、しっかりと見上げて「いい子にします」などと約束した。
一彦さんは「これがないと、一年が始まったような気がしない。長く続いてくれれば」と語り、期待を込めた。
スネカは、子どもや怠け者をいさめる一方、里に春を告げ、五穀豊穣や豊漁をもたらす精霊とされる。平成30年には「来訪神:仮面・仮装の神々」として、全国8県10件の来訪神行事が、無形文化遺産に登録された。
スネカに初めて参加したという第一中3年の佐々木和仁さんは「地域に元気を届けたいという思い。来年もできれば参加したい」と語り、笑顔を見せた。
岡﨑会長(49)は「過疎化が進み、吉浜の人だけでは難しくなっている。吉浜以外の第一中生も入りやすい環境を整えながら地区全体を回る形を維持したい」と今後を見据える。
無形文化遺産に登録された来訪神には能登のアマメハギ(石川県輪島市、能登町)も含まれる。岡﨑会長は能登半島地震被災を気遣い「私たちも同じ仲間として心配」と思いを寄せる。