4年ぶり「見っさいな」の声 世田米で火伏せの奇習「水しぎ」(動画、別写真あり)

▲ 4年ぶりに行われた水しぎ。世田米小では、一の会メンバーと児童が一緒に踊る光景も

 住田町世田米地区に伝わる火伏せの奇習「水しぎ」は24日、同地区内で行われた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で令和3年から5年までは中止したため、今回は4年ぶりの実施。愛宕地域の青年団「一の会」(菊池芳幸会長)が、奇抜な格好で家々や公共施設などを訪問して防火を呼びかけ、地域内には道化にふんしたメンバーのにぎやかな声が響いた。(清水辰彦)

 

 水しぎは世田米に約200年前から伝わる奇習で、世田米が宿場町として栄えていた当時、偶然ボヤを見つけた通りすがりの物乞いが鍋釜をたたいて住民に知らせ、大火事を防いだのが由来で、「水注ぎ」「水祝儀」がなまったものという。
 戦後しばらく途絶えた時期があったが、昭和51年に一の会が復活させた。同会では毎年1月24日に行ってきたが、コロナ禍では中止を余儀なくされ、今年4年ぶりに再開した。同会のほか、曙地区の消防団員らで構成する下町消防も伝承活動を続けてきたが、今年も実施は見送った。
 この日は、一の会メンバーら約30人が参加。愛宕公民館に集まり、それぞれが趣向を凝らしたメークや着付けをし、踊りの練習を行って本番に備えた。
 着崩した和服姿に顔を白塗りや墨汁などで覆った奇っ怪な一行は、2班に分かれて徒歩と車で愛宕地域を中心に民家や店舗など合わせて約300軒を回った。
 加えて、世田米小や世田米中学校、県立住田高校、世田米保育園、町役場、金融機関なども訪問。各所で「見っさいな、見っさいな。御大黒というひとは、一に俵を踏んまえて、二でニッコリ笑って…」などと歌いながら、木の棒で缶を打ち鳴らしてにぎやかに歩いた。役場を訪れていた住民や職員も拍手を送ったり、スマートフォンで撮影するなどしながら、久しぶりの伝統行事再開を喜んでいた。
 また、世田米小学校では各学年の教室を回り、児童らは歓声を上げて一行を迎えて教室を去ったあとも「見っさいな、見っさいな」と、一緒に声を上げながら連なって校内を歩いた。
 菊池会長(45)は「コロナ禍で実施を見送っていたが、ようやく行うことができてよかった。水しぎは火伏せの行事なので、一年の無火災を祈りつつ、楽しみながら回りたい」と話していた。