インタビュー気仙2024⑤未来への針路は/JICA海外協力隊・志田成美さん(29) 若者の挑戦のきっかけに
令和6年1月27日付 1面

──大船渡市赤崎町出身。国際協力機構(JICA)の海外協力隊として、来月からマダガスカルに派遣される。参加を志願した理由は。
志田 大船渡高校1年生の平成23年に発生した東日本大震災で自宅が全壊し、祖母を亡くした。避難生活や仮設住宅での暮らしなどを経験し、当時はあまり実感がなかったが、全国、世界中から多大な支援を受けたことを知り、海外とボランティアに興味を持った。
ボランティアに参加したいと進学した東北福祉大学の学生時代に、地下鉄駅の広告で海外協力隊の存在を知った。海外には、ボランティアや旅行も含めて14カ国ほど行ったことがあるが、「他国を助けられる仕事に関わり、世界中に恩返しがしたい」との思いをさらに強くした。
大学卒業後は仙台市内の銀行で働いていたが「東北の復興に携わりたい」という希望と、「目を背けてきた震災や地元としっかり向き合いたい」との思いが重なり、令和元年11月に大船渡市職員に転職した。被災地復興と国際協力における支援の形は、どこか似ている部分があると思う。
4年春に協力隊に応募し、派遣が決まった。夢に向かって背中を押してくれた家族や、在職しながらの派遣を認めてくださった市役所の皆さんに感謝しながら、私にしかできない活動を精いっぱい頑張りたい。
──約1年半の派遣期間でどのような活動に従事するか。また、現地での活動に向けて意識的に取り組んでいることは。
志田 任地であるマダガスカルのアンジャマシナという地域は、人口約3万人の地方都市。農業や畜産が主要産業で、まちの規模としては大船渡と重なる。職種がコミュニティー開発ということで、現地の市役所に配属され、地域住民とともに農民の収入向上やごみ問題などの地域課題解決に携わる予定だ。
派遣に向けては、約2カ月の研修でマダガスカル語の勉強に力を入れて取り組んでいる。現地に行ってから活動がしやすいように、任国の流行や文化などの情報収集も行いながら、視野を広く、何事にも興味を持ち、吸収する姿勢を大切にしている。
──海外派遣における目標は。
志田 日本、大船渡とマダガスカルをつなぐきっかけに少しでもなることが目標。珠算教室に通っていたので、そろばんを現地に持って行き、日本の文化を知ってもらうとともに、お金の大切さも広く伝えたい。
大船渡のまちの良さも紹介したいと思っている。市役所の窓口で市民と会話する中で、自分の知らないまちの魅力をたくさん教えてもらった。出発に向けて、大船渡の景色の写真を撮影しているので、自分を知ってもらうツールの一つとして現地で活用したい。
──海外協力隊としての活動の意気込みを。
志田 私は市職員として夢に挑戦する。そのことが、何かに挑戦しようとしている若い人たちが勇気を持って一歩踏み出すきっかけになってくれればいいと思っている。地元を離れることは、良くない捉えられ方をする時もあるが、外に出て初めて分かることも多い。今回の海外派遣で志高く学び、日本に帰ってきたら、大船渡から大船渡の素晴らしさ、魅力を発信するなど、海外に行った私でなければできない活動で地元に貢献できればいい。
夢のスタートラインに立てた今、たくさんの方々に支えられていることを実感する。不安がないと言えばうそになる。必ず何かの壁にぶつかるとは思うが、楽しいことも苦しいことも、経験するすべてを楽しんで、成長して帰ってきたい。(聞き手・菅野弘大)