インタビュー気仙2024⑥未来への針路は/市社会福祉協議会長・刈谷忠さん(69) チームで乗り越える年に

 ──長年にわたり児童養護関係の現場に携わり、昨年6月に大船渡市社会福祉協議会長に就任。半年が経過した今の状況は。
 刈谷 どういった事業があるのかは分かるが、その実体については担当者から話を聞いたりしている。児童養護施設であれば直接現場に入ることが普通だったので、その感覚でいくと、「仕事内容をつかめた」とはまだ自信を持って言えない。そうした中でも、一つ一つのケースを総合的あるいは包括的な視点で見ていくことについて、社協は進んでいると感じる。
 社会的な構造も家庭の機能も弱くなってきている。そこには子どもと老人がいて、老人がいれば介護の問題が出てくる。そして障害がある方がいる場合も当然ある。社協はその全てに対応する形になるが、そうなると必ず出てくるのが「連携して対応する」という言葉。横の連携の中で支援が必要な人を共有し、アセスメントしたうえで支援に入ってもらう、そういう関係を社会福祉法人同士で構築しなければ。
 地域に出かけて困り事を聞くアウトリーチの必要性も感じている。アウトリーチしてニーズを把握し、その要因を改善、解消するための対応策が制度上になければ、どのようなことを社協として企画して、どのように横の連携の中でシステム化していくかを考えることが大切だと思う。
 ──目指す組織像は。
 刈谷 社協の目標や理念をまとめると、地域と住民の福祉・幸福。そのためにいろいろな係があって、それぞれがつながりながら、多角的に取り組んでいる。そこに認識や意識の違いがあればバラバラになってしまうので、社協全体がチームだという意識を大切にしたい。最近は「チームにこにん」という言葉を繰り返し使い、チーム意識の浸透を図っている。
 各事業については確実にやっているが、「事業の目標はここで、そのためにこの業務を行う」という具体的な話まではなかなかしていないのではないか。今後は必要性や目的をきちんと確認しながらやっていきたい。戸惑いはあるかもしれないが、それは可能性があるということ。チームでやっていくという意識を強く持ってもらえたら。
 ──今月1日に能登半島地震が発生した。社協としての対応は。
 刈谷 今回は地域の入り口が狭く、幹線道路も限られていて、そうした中に支援者が集中する事態は、はばかられる。すぐに支援できないもどかしさはあるが、まずはニーズを把握しなければ。要請があれば対応する準備はできている。
 要請があり、現地のニーズにマッチしたのであれば、現地でもっと効果を生み出すための方法をさらに考えなければならない。そのうえで支援に入りたい。
 ──今年の抱負は。
 刈谷 地域住民が主体となって地域づくり、人づくりの場をつくっていく中で、それをサポート、フォローするのが社協の役割。地域住民に代わって社協が事業を進めるために会費をいただいているので、さらに発信に力を入れて理解を深めてもらうことが大切。
 また、4月からはさまざまな計画の更新年度を迎える。そういった計画を精査しながら、よりよいものにしていくスタートにしたい。社協の近未来を左右する重要な年になると思う。
 社協の理念、存在意義はご存じの通り。ただ、皆さんの協力や市の補助を受けたり、あるいは委託事業としてやっているので、やはり経営という面が出てくる。理念と経営の両立についても検討を進めていかなければ。いずれも「チームにこにん」としてみんなで協力し合って乗り切る。(聞き手・新沼麻波)