サル被害防止に期待 日頃市町でモンキードッグ見学会 導入・飼い主確保へ訓練実演(別写真あり)

▲ モンキードッグの訓練などを実演

 大船渡市日頃市町内で30日、サルによる農作物や人身への被害などを防ぐ追い払い犬「モンキードッグ」の見学会が行われた。青森県内で活動している訓練士とシェパード犬を招き、訓練や追い払いを実演。市内ではモンキードッグや飼い主の確保ができていない状況が続く中、参加者は育成までの流れや導入の有効性に理解を深めた。(佐藤 壮)

 

 見学会は、市鳥獣被害対策協議会(菊田勝会長)が主催。町内各地域の中山間事業・多面的事業認定組織、ひころいち町まちづくり推進委員会、大船渡猟友会、県、市農協、市などの関係者ら約30人が参加した。
 警察犬おいらせ訓練所の小山田松男所長(70)=青森県おいらせ町=が、同県むつ市や佐井村で活動しているシェパード犬の訓練を実演。「座る」「待て」といった指示の徹底や、人への慣れ、道具を使った遊びの中で必要以上に興奮させずに追い払う動きを学ぶ流れを示した。
 後半は、サルの位置情報をスマートフォンなどで確認できる「ANIMAL MAP(アニマルマップ)」をもとに移動し、実際に追い払いの実演も行われた。
 10年以上にわたりモンキードッグの訓練や追い払いに携わってきた小山田所長は「普通のイヌを活用していくのも一手。普段から飼い主との信頼関係ができている」と語る。協議会では、アニマルマップをもとに地域住民が普段飼っているイヌと一緒に散歩に近い形で回り、農地や住宅近くへの出没を防ぐといった普及を見据える。
 見学会に参加した大船渡猟友会の佐藤武会長(64)は「人里に入り、威嚇してくるサルもいる。追い払いの花火に慣れてしまったサルもいる中で(モンキードッグは)ある程度効果が出ると思う。継続して追い払いを行うことが大事。なかなか難しいが、追い回して近寄らせず、サルが人里に来るのをあきらめるようにしなければ」と話す。
 事務局の説明によると、農作物の鳥獣被害対策でモンキードッグを活用した実績があるのは、全国で60市町村超に及ぶ。長野県大町市が発祥地とされ、当時の担当職員が「サルを追いかけるイヌがいる」との話を聞いたことから活動が広がり、他自治体でも導入が進んだ。
 素質があれば、犬種や大きさに関係なく担うことができる。学習しやすい若さに加え、サルに負けない体格の中型以上、山野での活動がしやすい脚の長いイヌが有利とされる。
 モンキードッグはサルを見たら追い払うとともに、人や他のイヌ、動物に危害を加えない特徴を持つ。追い払い時にはリード(引き綱)を放すため、戻ってくる訓練が必要。リードのない状態ではイヌも興奮状態になるため、たまたま遭遇した住民やペットに危害を加えないための訓練が、地域理解を広げる中では重要になる。
 訓練期間は約半年で、費用は40万円程度という。協議会では先進地の視察や訓練費用などの負担軽減制度を創設するなど準備を重ねてきたが、イヌや飼い主が確保できない状況が続く。
 一方、サルは日頃市町や立根町の人里で出没が相次ぐ。サル用複合柵を設置した農地での被害は減った半面、高齢者や子どもらに危害を加えるといった不安は日増しに高まっている。協議会では引き続き、関係者の意識醸成を図りながら、導入への検討を進める。