インタビュー気仙2024⑧未来への針路は/(一社)大船渡地域戦略理事長・志田繕隆さん(55) 観光を経済の起爆剤に

 ――昨年、大船渡地域戦略が観光庁による観光地域づくり候補法人(候補DMO)になった。これが登録DMOになるとさらに人や資金、情報に関する支援を得やすくなるわけだが、特にどのような部分が大船渡の観光振興においてメリットとなりうるか
 志田 補助金等に関する「情報」を国側からもらえるようになるのは大きい。これまでは取り組みに沿った補助金制度を見つけるまでに時間と労力がかかっていた。中小企業を対象とした経営のハンズオン支援(専門家派遣)があるのもメリット。だが、一番助かるのは、さまざまなマーケティングデータが提供されるようになる点だと思う。
 ――マーケティングが最重要と考える理由は。
 志田 宿泊施設なら、利用客がどこから来た人かといった情報も宿帳で把握できるが、飲食店等は違う。「コロナ禍で名前や住所を書いてもらうようになって初めて、釜石などの人も来ていると分かった」という事業者も多い。どんな人に利用されているか知り、誰をターゲットに商売すべきかを考えるには、マーケティングが欠かせない。
 当法人が立ち上げた「大船渡さんぽ」というポイントサービスアプリがある。市内の登録店で買い物をすると100円あたり1ポイント(1円相当)がたまり、そのポイントをほかの登録店での買い物に利用できる仕組みで、現在は300人程度の利用者がいる。
 これによって地域経済を循環させる効果が期待できるわけだが、同時に、やってみて判明したのは利用者の約4割が気仙以外の人ということ。ここに着眼した。今までは地元だけ相手にしていた商売も、外部の人に目を向けた商品やサービスを開発することでまだまだ売り上げを上げる余地があると分かった。外から来る人を増やすべく、観光を最大限活用しようというのが私たちの考え。そのためにも、マーケティングデータを収集し、地域事業者に素早く提供できるような仕組みをつくりたい。
 ――既存のツアーを含め、コンテンツの創出や磨き上げに関する展望は。
 志田 三陸鉄道と絡める「恋する旅行。」については、マンネリ化しないよう新機軸を取り入れていく必要がある。地域事業者が多いエリアとも結びつけたい。盛町だったら木町の市日を日程に盛り込むとか、大船渡町だったら三陸ブルーラインプロジェクトのタイルアートや、トリックアート、千石船・気仙丸の見学を入れるなどだ。なかなか〝それだけ〟を見に大船渡へ来るというのは難しい。ツアー企画の一環として組み入れられれば。
 また、大船渡の海の幸もおいしいのは間違いないわけで、別の産地とどう差別化を図っていくかが重要。海産物を食べられるだけでなく、ビーチクリーン(海浜清掃)を旅程に入れた企画も考えている。「海を大切にするまち」という良いイメージを大船渡産海産物の付加価値とし、ブランディングにつなげたい。
 ――「みちのく潮風トレイル」のルートを年間10コースに分けて歩く「おおふなトレイル」も好評だ。
 志田 潮風トレイルは国内外の媒体で〝今年ブレークするルート〟として注目されている。おおふなトレイルには、毎回参加してくださるようなリピーターも多い。また、何度も来ていただくことで、トレイルルートだけでなく周辺地域も歩いてみたくなる効果があると感じている。
 歩いてでないと気づけない発見がある。地元の方にもぜひ参加してもらいたい。大船渡をもっと魅力ある地域にできるということがご理解いただけると思う。(聞き手・鈴木英里)=おわり=