ふるさと納税 過去最高に 5年度の寄付実績 昨年12月末時点で9・4億円

 陸前高田市の本年度ふるさと納税寄付実績は、昨年12月末時点で約9億4600万円と初めて9億円を突破し、4年連続で過去最高を更新することが確実となった。例年は年末に寄付が集中するが、本年度は返礼品のルール厳格化に伴い、制度変更前の昨年9月に駆け込み需要があり、年末と合わせて2度のピークがあったのが要因。市が昨年11月に寄付金の使い道として新たに加えた「給付型奨学資金事業」の受け付け実績は、昨年12月末時点で約1100件、約1800万円と、好調に寄付を集めている。(高橋 信)

 

給付型奨学金も受け付け好調


 市によると、月別の最多は9月の約2万1400件、約3億1900万円。前年同月と比べ、件数で約4・1倍、金額で約5・5倍と急激に伸びた。
 背景にあるのは、返礼品の調達や送付にかかる経費を寄付額の5割以下とする基準の厳格化。総務省が過度な返礼品競争を防止するため講じた措置で、昨年10月1日に始まった。
 これに伴い、全国各地の自治体は返礼品の見直しや寄付額の引き上げを実施し、陸前高田市も同様の対応に追われた。その結果、引き上げ前の9月に需要が高まり、市は返礼品の品目を充実させるなどして対応した。
 当初は年末の需要を先食いしているとの懸念もあったが、12月も堅調に寄付を集めた。これにより累計額は前年の同月末と比較して約2億円(26%)増となり、初めて9億円台に乗せた。
 返礼品の種類は、800品程度。カキや米崎りんごなど、市が強みとする高品質な1次産品が人気を博し、海産物を使った缶詰類も注文が多いという。
 昨年11月には、寄付金の使い道に給付型奨学資金事業を追加。同事業は佐々木拓市長が推し進める人材育成策の一つで、経済的な理由で修学が困難な市出身の大学生や専門学校生らを対象に20万円の入学一時金と月額3万円の奨学金を給付する。
 給付初年度の6年度は、一般財源を充当して最大20人を支援。7年度以降は年間10人をベースとするが、ふるさと納税の寄付金も財源に加え、寄付額に応じて給付人数を増やす。
 同事業の寄付額は、開始から2カ月で約1800万円。市担当者は「子育て支援や教育支援に役立ててほしいと希望する人はもともと多く、その受け皿となっている」と分析する。
 ふるさと納税は、住んでいる自治体以外に寄付すると、税金の還付や控除が受けられる制度。生まれ育った古里などへの貢献、応援ができる仕組みとして創設された。全国的に利用は増加傾向にあり、総務省のまとめによると、令和4年度の実績は約9654億円、約5184万件で、ともに対前年比1・2倍だった。
 陸前高田市は平成20年度に運用を開始。震災後の中断を経て、27年7月に受け付けを再開した。地元の障害者支援施設の利用者が返礼品のこん包・発送作業を担っている。
 寄付額は28年度から令和元年度まで、毎年4億円台で推移。新型コロナウイルス感染拡大後は「巣ごもり需要」の発生で寄付の流れが加速し、2年度は前年比60%増の約6億5000万円、3年度は同19%増の約7億7700万円、4年度は同5%増の約8億1680万円と伸ばした。
 納税者が選べる寄付金の使い道は、「子ども支援」「農林水産業・商工業などの振興」「給付型奨学資金事業」など10の分野を設けている。
 市商政課ブランド推進係の遠野正隆係長は「一人でも多くの人に陸前高田の魅力を発信し、制度を通じた地域活性化につなげていきたい」と力を込める。
 年度別の寄付実績は別掲(5年度は昨年12月末時点)。