クズのつる退治に苦慮 高田松原 マツに絡まり枯れる原因に

▲ マツの木に絡まるクズのつる撤去に当たる関係者

 陸前高田市の高田松原で、つる性植物のクズが繁殖し、マツの生育に悪影響を及ぼしている。約7万本あったとされる高田松原の松林は東日本大震災でほぼすべて失われ、その後、4万本が植えられた。クズは昨年の酷暑で一気に伸びたとみられ、一部でマツに巻き付き、すでに枯れている木もある。NPO法人高田松原を守る会(鈴木善久理事長)がクズの刈り取りを進めているが、状況が改善しない場合、行政などによる対策も求められそうだ。(高橋 信)

 

 守る会は10日、県内外のボランティアの力を借り、計11人で刈り取り作業に当たった。クズのつるは高さ数㍍のマツの木全体に絡まっており、ノコギリやはさみを使ってつるを切った。勢いよく巻き付いたつるの駆除は一筋縄ではいかず、悪戦苦闘しながらの作業が続いた。
 守る会によると、クズは昨年夏の高温で急成長し、つるが絡まったマツはクズの葉で覆われ、光合成ができないという。それらが原因とみられ、茶色く枯れている木も確認された。
 松林の再生活動に長年協力しているボランティアの原野優さん(59)=一関市=は「ずっと携わってきたが、こんな光景は初めてで、正直驚いている。枯れている木もあり、非常に残念。つるを取るのは大変だが、もとの高田松原に戻すためには仕方がない」と汗をぬぐった。
 「白砂青松」と称される名勝・高田松原。松林の形成は江戸期を起点とし、以来、約350年の間、住民の手で守り育ててきた。
 昭和2年には日本百景に指定され、15年には名勝高田松原として国指定文化財に登録。市内外の人に親しまれる景勝地だったが、震災で「奇跡の一本松」のみを残して消失した。新たな植栽エリアは防潮堤の第一線堤、第二線堤の間に設けられ、令和3年までに、県が3万本、守る会が1万本の計4万本を植えた。
 鈴木理事長は「会員だけでは限界がある中、ボランティアに積極的に協力してもらい、感謝の気持ちでいっぱい。高田松原を再生するため一つずつ活動に取り組んできたが、ここで枯れたら意味が無くなる。県や市などにもこの状況を知っていただき、今年の夏もまた繁殖するようであれば対策を求めたい」と訴える。