博物館のシンボル大切に ツチクジラ剥製 点検作業

▲ 新たな博物館開館後、初めて行われたつっちぃの点検作業

 陸前高田市高田町の市立博物館(松坂泰盛館長)で13日、ツチクジラの剝製「つっちぃ」の点検作業が行われた。東日本大震災後の文化財レスキューを経て修復された貴重な資料で、震災で全壊し、再建を果たした同館の復興のシンボル。点検は新館の開館後初めてで、学芸員は「これからも大切に管理していきたい」と話す。
 点検は休館日に合わせて実施。震災後のつっちぃのレスキューに携わってきた県外の専門業者に委託し、社員2人が時間の経過に伴う表皮などの微細な変化を念入りに確かめ、慎重に修復した。
 同館によると、つっちぃは千葉県白浜で捕獲されたメスの剥製で、全長9・7㍍。ツチクジラの剥製は世界で一つしかないといい、国立科学博物館での展示などを経て、平成6年から同市の「海と貝のミュージアム」に飾られ、親しまれた。
 震災が起き、同ミュージアムは全壊。つっちぃは表面を覆うFRP(繊維強化プラスチック)コーティングが一部剥がれ、標本内部に約100㍑の海水が流れ込むなど損傷した。
 しかし、流失と致命的な損壊を免れ、国立科学博物館に運ばれて修復。震災前まで全身を覆っていたコーティングのうち、左半身を取り除き、本来の表皮を見せることで生物的価値を高めた。
 令和2年、同ミュージアムと一体的に整備された市立博物館の復旧に合わせて3453日ぶりに帰還し、4年11月の開館後、海水をかぶった過去に例のない文化財レスキューの象徴的な資料として、常設展示室中央エリアにつるされている。専門業者による点検作業は、今後も年に1度行われるという。
 同館の浅川崇典学芸員(33)は「当館の復興の象徴的な資料。国立科学博物館をはじめ、全国の関係者の支援・協力で救出されて修復されたストーリーを秘めている。一人でも多くの人に見てもらえるよう、今後も管理を徹底していく」と見据える。
 14日は通常通り開館する。