食用拡大で価格安定を イサダ食用利用等促進セミナー 今季の漁本格化前に情報共有(別写真あり)
令和6年2月15日付 1面

大船渡をはじめ、県沿岸で2~3月を中心に水揚げされるイサダの需要拡大につなげようと、気仙の水産関係組織などによるイサダ食用利用等促進セミナーが14日、大船渡市大船渡町の大船渡プラザホテルで開かれた。現状では養殖用の餌や釣りレジャー向けとしての需要が大半を占め、不安定な価格動向が続く中、参加者は健康食品としての利用や流通、調味料分野の各情報を共有。今季のイサダ漁は19日(月)に解禁され、県内漁獲枠は9000㌧に設定されている。(佐藤 壮)
セミナーは、気仙広域水産業再生委員会と大船渡湾冷凍水産加工業協同組合、気仙両市、県大船渡水産振興センターが主催。関係者が一堂に会し、食用利用等の現状や最新の活用研究等について理解を深めようと企画した。
市内外の漁船漁業や水産加工、行政関係者ら約50人が出席。冒頭、セミナーを主管する同センターの阿部孝弘センター長が「イサダは前浜の重要資源として、持続可能な利用や付加価値向上が望まれている。研究成果や知見に理解を深め、広く発信を」とあいさつした。
事例紹介では、市内に工場を構える㈱國洋の濱田浩司代表取締役社長が「イサダ利用の可能性」と題し、食用化への取り組みなどを振り返った。一昨年から、三陸産イサダのオイル成分を生かしたサプリメントの商品販売を本格化させ、昨年は米国での健康食品展などにも参加している。
今後の展開を見据えて「アメリカでは『肌にいいのか』『髪にいいのか』といった問い合わせが多く、機能を分析していきたい。サプリメント販売を軌道に乗せることで、イサダの浜値向上や漁業者の所得向上などを実現させたい」と力を込めた。
引き続き、農林水産省農林水産政策研究所主任研究官の若松宏樹氏が「イサダの産地市場と流通に関する分析」と題して講演。釣り客の需要に大きく左右される傾向などに触れながら、食用などに仕向けることで価格不安定化のリスク分散につながる流れを示した。
また、帝京科学大学生命環境学部生命科学科准教授の山田秀俊氏は、イサダの健康機能を活用した食品開発について解説。イサダに含まれる「8―ヒドロキシエイコサペンタエン酸(HEPE)」が、中性脂肪や内臓脂肪、高コレステロール血症を抑制する働きを紹介した。
粉末素材として流通でき、サプリメントの原料にとどまらず、食品では練り物や汁物、調味料との相性の良さも強調。睡眠の質改善といった機能性にも触れながら、食生活へのさらなる普及に期待を込めた。
会場では、県内で製造販売されているイサダ食品の紹介や試食も行われた。乾燥イサダを使った料理では、大船渡町の「活魚すごう」で提供している「いさだクリームコロッケ」や、大船渡プラザホテルで調理した「イサダチーズピザ」が並んだ。
さらに、同ホテルではイサダの発酵調味料を生かしたチャーハンも提供。國洋が製造する味付け粉にイサダ粉末を添加した「フィッシュスキンチップス」なども関心を集めた。
イサダはツノナシオキアミの別称で、主に養殖や遊漁の餌として流通。例年2月~3月にかけて水揚げが続く。
令和4年度における大船渡市魚市場でのイサダの水揚げ実績は、数量が3152㌧で前年度比30%増、金額は1億9887万円で同4%増に。いずれも県内全体の約半数を占めた。
2月下旬から100㌧を超えるまとまった数量の水揚げが続き、宮城県を含め各港でも順調に伸びる中、価格は下落。1隻当たりの上限数はカゴ300個から275個、さらに250個と下がり、漁業者にとって漁模様の割に金額が伸びない状況が続いた。
今季は今月19日から漁期となる。漁獲枠は、昨年、一昨年に続き、岩手、宮城両県いずれも9000㌧に設定。令和2年比で4割減を維持し、中長期的な資源確保を見据える。