消えゆく「幕式」表示バス 最古参車両が4月引退 県交通大船渡営業所 陸前高田住田線業務終了で

▲ 走行開始から四半世紀が過ぎ、4月で引退するバス㊨。営業所内では唯一、方向幕が「幕式」となっている

 岩手県交通㈱大船渡営業所(舘洞良明所長、大船渡市立根町)に配備されている路線バス用車両で最古参の1台が、4月で引退し、廃車となる。デジタル化が進む中、路線バスでは唯一、行き先を表示する方向幕がアナログの「幕式」で、近年は目立ったトラブルもなく走行してきた。3月の陸前高田住田線の業務終了に伴う措置で、地域住民や関係者のさまざまな思いも乗せながら〝ラストラン〟を続ける。(佐藤 壮)

 

 役割を終える車両は、ナンバーから「1184」と呼ばれる中型バス。59人乗りのいすゞ自動車製で、平成9年5月に登録された。走行性能や冷暖房設備に問題はなく、26日も大船渡市内を中心に駆け巡った。
 もともとは国際興業戸田営業所=埼玉県=に新規配属された1台。19年に岩手県交通大迫バスターミナル=花巻市=に移り、ターミナル閉所に伴い、30年に大船渡営業所配属となった。
 現在、同営業所には路線バス10台が配属されている中、この車両だけが、車体前面で示す行き先や、側面にある運行区間の表示が「幕式」になっている。どの路線を走行するかで、乗務員らがロール状に格納しているフィルムを動かし、表示を変える。
 現在は、LEDのデジタル表示が主流。アナログの幕式は手間がかかるが、天候にかかわらず見やすさに長け、活躍を続けてきた。
 車内のマニュアルギアは、長い棒状のロッド式シフト車。走行距離は、137万㌔超に達した。地球の外周は約4万㌔で、34周分に当たる。

ロッド式シフトを操作し、運転を続ける三浦さん

 同営業所では、配属しているバスに対し、乗務員が担当制をとっている。運転を続ける三浦範久さん(64)は「工場の人たちの丁寧な整備のおかげで、ここ数年は冷暖房の苦情もなかった。ちょっとした異変でも言いやすく、対応してくれたから、長年運転できたと思う。日頃は、手すりが揺れないぐらいの運転を心がけている」と語る。
 舘洞所長(38)は「アナログの幕式は、行き先表示が変わる時の対応が大変で、手書きもしたが、今はいい思い出。コンパクトで取り回しがよく、古いなりの良さがあるだけに、残念な思いもある」と話す。
 今回の引退は、3月29日(金)で県交通としての陸前高田住田線運行が終了するため、営業所内の車両減を進める一環での対応。同線は住田町世田米の住田高前から陸前高田市米崎町のイオンスーパーセンター陸前高田店までを結ぶ路線で、今後は両市町が代替バスを走らせる。