カキ水揚げ前年比4割減 市議会定例会で当局が現状説明 高水温の影響 漁業に影

▲ 海水温の上昇の影響が懸念される広田湾

 陸前高田市は28日の市議会定例会で、海水温の上昇に伴う市水産業の被害状況を示した。本年度の養殖カキ水揚げ量はむき身、殻付きともに前年比約4割減と大幅に落ち込む見込みで、本年度分の出荷を終えた広田湾産イシカゲ貝も減産した。ホタテは前年をやや下回り、ワカメは生育が遅れているといい、養殖漁業への高水温の影響が明らかになった。(高橋 信、2面に一般質問の主なやり取り)

 海洋環境の変化に伴う漁業被害は、同日行われた市議会定例会の一般質問で、伊勢純議員(日本共産党)が取り上げた。「被害が長期にわたることが確実となってきた」とし、現時点の被害状況と今後の対応策を尋ねた。
 市によると、日本近海における平均海面水温の上昇は令和3年までの約100年間で1・19度上昇しているという。気象庁は、昨夏における三陸沖の海水温が水深300㍍地点で例年よりも約10度高かった観測結果を発表している。
 佐々木拓市長は「昨年の高水温は、地球温暖化以外にもスーパーエルニーニョ現象による海水温の上昇、黒潮続流の北上の影響が加わったという情報もある。広田湾でもこうしたことが要因となり、海水温が非常に高い状況であったと推定される」と述べた。
 そのうえで、広田湾漁協から聞き取りをした被害状況を報告。カキは身入り不良が多く、へい死が相次いでおり、水揚げ量は4年度(むき身約101㌧、殻付き約592万粒)の6割程度にとどまると説明した。
 広田湾産イシカゲ貝は昨年7~9月に水揚げし、数量は前年比30・3%減の58・6㌧。イシカゲ貝は高水温の影響を受けやすいとされ、へい死が大量発生した。
 殻付きホタテは4年度の約118㌧をやや下回る見通し。水揚げを控えるワカメは、高水温の影響で種の入荷が1カ月程度ずれ込んだため、生育が例年より遅れており、関係者が品質への影響を注視している。
 佐々木市長は「養殖水産物の水揚げ金額は、数量の減少に伴って単価が上昇しているものの、全体額は昨年度を下回ると予測している。当市には高水温による漁業被害を調査する研究機関がないため、引き続き、県との連携を密にして対応していきたい」と答えた。
 市は被害対策として、共済契約者に対する掛け金補助を実施している。市長は「引き続き、広田湾漁協などの関係機関と連携し、支援に努める。県に対しても掛け金補助を検討するよう強く働きかけたい」と述べた。