大半が7年度末までに移行へ 地区運営組織 市が今後の見通し示す 住民理解や〝成功体験〟が鍵に

▲ 地区運営組織の越喜来活性化協議会による「ど根性ポプラ」のライトアップに向けた準備作業。新たな活動も好評を博している(昨年12月)

 大船渡市内では、持続可能なコミュニティー運営や活性化を見据え、地区運営にかかる新たな取り組みが進んでいる。すでに組織が発足した日頃市や越喜来では、新たな活動が生まれるなど、多様な住民参画や活性化につながる成果が出ているほか、他地区でも幅広い世代の住民がアイデアを寄せるワークショップが盛んに行われている。市当局は28日の市議会一般質問で、令和7年度末までに多くの地区で新たな運営組織移行が進む見通しを示し、さらなる住民理解や成功体験の創出を見据える。(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやり取り)

 

 市内には、盛、大船渡、末崎、赤崎、蛸ノ浦、猪川、立根、日頃市、綾里、越喜来、吉浜の11地区に市立公民館があり、この単位で地区コミュニティーの活動を展開している。
 近年、住民生活の多様化や学校統合、震災の影響による急激な人口移動もあり、地区コミュニティーのあり方は大きく変化している。
 こうした中、市は令和2年度に「住民自治の推進と協働による新たな地区コミュニティの創造指針」を策定。持続可能な地域づくりに向けた取り組み例として、導入段階から第1~4段階ごとの流れ=図参照=などを示し、協議を後押ししてきた。
 市によると、日頃市、越喜来の両地区は第3段階に位置し、すでに発足した地区運営組織で実践活動を展開。盛、大船渡、蛸ノ浦、立根、綾里、吉浜の6地区は、第1~2段階にある。それぞれ6~7年度の地区運営組織設立を目指している。
 このうち、吉浜地区では4月から新たな組織「吉浜まちづくり振興会」が稼働。これまでの地区公民館と地区助け合い協議会の機能を内包する。他地区でも、住民ワークショップが終了・終盤を迎え、組織移行への動きが進む。
 末崎、猪川両地区は第1段階にあり、今後の取り組みなどについて地区公民館役員や住民代表らが協議を重ねる。赤崎地区は導入段階にあり、新年度からの取り組みを目指している。
 地区ごとに自主的な動きが拡大している中、一般質問では渡辺徹議員(光政会)と東堅市議員(新政同友会)が取り上げ、現状や課題、今後の展開を巡り論戦を交わした。
 佐藤信一協働まちづくり部長は「地区ごとに差はあるものの、7年度末までには多くの地区が第3段階に移行する見込み。日頃市地区では8年度に、現計画を見直した新たな計画の下で地区づくりを進める第4段階に移行する予定」と答弁した。
 まちづくりの現状に関しては「人口減や少子高齢化、住民の価値観の多様化によるライフスタイルの変化、人とのつながりの希薄化を背景に、参画者が減少している。地区づくりへの価値観や必要性について、多くの住民理解を得るのが課題。参画する機会や場をつくり、実践しながら成功体験を積み重ねていくことが肝要」と述べた。
 第3段階に当たる地区運営組織の設立後も、自主的な運営の定着には長期間を要する見通しも示した。「内容によっては成果が見えにくく、成功体験が得にくい場合があるほか、社会情勢の変化などで新たな課題が生じることも考えられる。中間支援を担うNPO法人と連携し、地区状況に沿った支援に努めたい」と話した。
 先行している日頃市、越喜来両地区の現状としては「これまでにない多彩な取り組みが展開され、多くの住民が主体的に関わっている。一方、住民同士の話し合いが進まず、成功体験に結びついていない事業や、取り組みに対する住民の熱量低下が見られる。地区住民全体の活動には至っていない現状も明らかになってきた」と語った。
 現行の公民館も含め、組織を担う役員の担い手不足・業務負担は「全ての地区に当てはまる課題」と指摘。そのうえで「これまでは、事業の企画・実施を役員が中心に行うのが主流。地区づくり計画の策定過程では、多様な住民の参加を求め、住民自身が実践活動を進める前提で話し合いを重ね、担い手の育成・発掘を合わせて行っている」と期待を込めた。