「人生と思え」 教え胸に 最後の「全校トレーニング」 統合控える有住中 27年の伝統に幕下ろす(別写真あり)
令和6年3月7日付 7面

本年度末で閉校する住田町立有住中学校(村松正博校長、生徒37人)で5日、最後の「全校トレーニング」が行われた。平成8年度から、体力づくりの一環として始まった通称「全トレ」だが、同校は新年度には世田米中と新設統合し「住田中学校」となるため、同日をもって一つの伝統に幕を下ろした。生徒たちは全トレで培った体力と精神力を今後の糧とし、さらに成長していくことを誓う。(清水辰彦)
トレーニング後、生徒たちを激励する佐々木さん
雪で白く染まったグラウンドに、全校生徒のかけ声が響いた。最後の全トレとなった5日、生徒たちが白い息を吐きながら、学校裏手の山道を駆け抜けた。
全校トレーニングの始まりは27年前にさかのぼる。平成8年、有住中学校に教員として赴任してきた佐々木裕子さん(77)=遠野市在住=が発起人となり、体力づくりや子どもたちの肥満・運動不足解消のためのトレーニングが始まった。
平日の部活動前、全校生徒が山道をランニングする。雨が降れば体育館で体を動かす。現在まで欠かすことなく行われ、有住中の誇る伝統となっていた。
平成8年度から本年度まで、およそ700人の生徒たちがこの全トレを経験しており、18年度と25年度には全国中学校駅伝大会に出場したほか、全国都道府県対抗駅伝継走大会で活躍した生徒たちもいる。トレーニングを通じて学校に一体感も生まれており、16年度にはこの取り組みが評価されて文部科学大臣賞も受賞した。
最後のトレーニングを終えた生徒たちからは「最初は体力に自信がなかったけど、全トレを続けて体力がついたし、つらい時でも頑張る力が付いた」「つらいこともあったが、やり遂げる達成感を得られた。これからもそれを生かしたい」「一人一人が成長できた、いい伝統だと思う」といった声が聞かれた。
「全トレと思うな。人生と思え」──。佐々木さんは常に、生徒たちにそう語ってきた。8年度に赴任してから同校で11年間勤務し、退職後も同校の全校トレーニングや特設陸上部に関わり続ける。最終日の5日も学校に足を運び、トレーニング終了後には「先生たちも全員参加している。こんな学校はほかにない。日本一の取り組みだと思う」と、絶えず続いてきた活動をたたえた。
赴任当時から「私は『すべての生徒が活躍する』という方針でやってきた。平等に、全員に厳しく接してきた」と振り返る佐々木さん。
全トレ最終日、生徒を前に「思い出だらけの有住中学校だった。生徒、保護者、地域の方々が協力してくれた」と感謝。統合にも触れながら教員時代と変わらぬ愛情あふれる〝げき〟を飛ばし、「君たちが新しい歴史をつくっていくんだ」と呼びかけた。
世田米、有住両中学校は今月末でそれぞれの歴史に幕を下ろし、4月に新設統合して「住田中学校」となる。