活気呼ぶタイルアート サン・アンドレス公園で展示開始 防潮堤生かし来年3月まで(別写真あり)

▲ タイルアートに彩られた防潮堤沿いで「宝探し」を楽しむ参加者

 大船渡市大船渡町のサン・アンドレス公園で10日、一般社団法人三陸まちづくりART(前川一枝代表理事)による防潮堤タイルアートの展示開始イベント「セバスティアンの黄金探検ふしぎ謎解き&宝探しatサン・アンドレス公園」が行われた。マツやツバキなど、三陸沿岸にちなんだ植物をデザインした作品が並ぶ中、青い帽子を身につけた子どもたちの歓声が響き渡った。タイルアートは来年3月2日(日)まで展示する。(佐藤 壮)

 

 展示開始イベントには、地元の小学生ら約30人が参加。展望塔の下で、中世ヨーロッパの海賊帽をイメージした帽子を制作した後は、気仙黄金伝説にちなんだ冒険家を演じる俳優らとともに「サン・アンドレス島」を出発し、防潮堤沿いを巡る謎解きの旅に出た。
 大きなマツの作品前では、付近に落ちている松ぼっくりを探し、さらに謎解きにつながるアイテムを手にすると「やったぞ、セバス!」といった声が飛び交った。謎解きのクイズだけでなく、塩害防止を目的に高田松原に整備された松林の歴史を紹介する時間も設けられた。
 参加した大船渡北小の菊池健斗さん(1年)は「宝探しが面白そうだったから、案内のチラシをもらってすぐに申し込んだ。防潮堤にいろいろな風景があっていいと思った」と話し、笑顔を見せていた。
 京都府在住のアーティストで、空間演出などを担当する井上信太さん(56)は「こうしたイベントを通じて、子どもたちが防潮堤を身近にとらえ、さらにその先にある海にも自然と親しみを抱くのではないか。今後につながる最初の一歩。今後のツアーやイベントにもつながれば」と語り、防潮堤沿いに広がるにぎわいに目を細めていた。
 三陸まちづくりARTは、一昨年から大船渡町内の防潮堤にタイルアートを飾る活動を展開。今年は、県の「被災者の参画による心の復興事業費補助金」などを生かしている。
 サン・アンドレス公園内から見渡せる防潮堤約350㍍に、260作品以上を展示。ブルーラインとして青いタイルが一直線に並ぶほか、昨年までの活動で制作した作品や、今回新たに取り組んだ三陸の植物をイメージした彩りも目を引く。
 2月から本格化した作品制作には、市内外の保育園児や小学生、災害公営住宅に暮らす高齢者をはじめ、幅広い世代の住民らが参加。小さなタイルを並べ、板に貼り合わせることで、個性豊かな葉の模様などが生まれた。
 来年3月までの期間中は、自由に鑑賞できる。夏にもワークショップやイベントを企画し、防潮堤へのさらなる掲示に加え、住民らが気軽に親しむ機会を創出する。
 平成4年に完成した同公園の名称は公募で決定し、慶長16(1611)年に伊達政宗の許可を得て伊達領沿岸の測量を行っていたスペイン使節、セバスチャン・ビスカイノが大船渡湾の景観をたたえて「サン・アンドレス湾」と名付けたことに由来。測量だけでなく金銀島探索も目的としていたとされ、今回の展示開始イベントでは、気仙の産金文化にちなんだ企画も織り交ぜながら、今を彩るタイルアートと歴史の融合を図った。